
「もう何年も動かしていない旋盤が工場の隅に置いてある」「古いマシニングセンタを処分しようか迷っているうちにそのままになっている」
そんな状況の工場は少なくありません。では、使っていない機械にも固定資産税はかかるのでしょうか。
結論から言うと、使っていなくても固定資産税はかかります。
この記事では、工作機械にかかる固定資産税の仕組みから、税負担を減らす具体的な方法まで、製造業の経営者・設備担当者向けにわかりやすく解説します。
工作機械にかかる固定資産税とは
固定資産税というと土地や建物にかかる税金というイメージが強いですが、機械・設備にも固定資産税はかかります。機械にかかる固定資産税は正確には**「償却資産税」**と呼ばれます。
償却資産税の基本
償却資産税とは、土地・家屋以外の事業用固定資産に課税される地方税です。工場で使用する工作機械、プレス機、搬送設備などはすべてこの対象になります。
主な特徴は以下の通りです。
- 課税主体:市区町村
- 税率:1.4%(標準税率)
- 課税基準日:毎年1月1日
- 申告期限:毎年1月31日
- 課税対象:事業の用に供することができる資産
**「事業の用に供することができる資産」**という点が重要です。実際に使用しているかどうかではなく、「使おうと思えば使える状態」にあれば課税対象になります。
どんな機械が対象になるか
償却資産税の対象になる主な工場設備は以下の通りです。
- 旋盤・NC旋盤・CNC旋盤
- マシニングセンタ
- フライス盤
- プレス機・プレスブレーキ
- 研削盤・研磨機
- 溶接機・レーザー加工機
- コンプレッサー・クレーン
- フォークリフト
工場にある機械はほぼすべて対象と考えて差し支えありません。
使っていない機械にも税金がかかる理由
「使っていないのになぜ税金がかかるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。
法律上の考え方では、機械が工場内に存在して「いつでも使える状態」にある以上、事業用資産としての価値があるとみなされます。電源を入れていない、ほこりをかぶっているといった状況は関係ありません。
極端な話、10年間一度も動かしていない機械でも、工場に置いてある限りは課税対象です。
課税を免れるケースはあるか
以下のいずれかに該当する場合は、課税対象から外れます。
- 除却(廃棄)した場合:機械を解体・スクラップとして処分し、帳簿から除却した場合
- 売却した場合:第三者に売却して自社の所有でなくなった場合
- 災害で滅失した場合:火災・水害などで機械が使用不能になった場合
- 取得価額が150万円未満の小規模事業者:償却資産の合計評価額が150万円未満の場合は免税
重要なのは「工場から出ていく」か「帳簿から消える」ことです。置いたままにしている限りは課税が続きます。
税額はどのように計算されるか
使っていない機械にいくら税金がかかっているか、計算方法を理解しておきましょう。
評価額の計算方法
償却資産の評価額は、取得価額を基準に毎年減少していきます。
計算式: 前年度評価額 × (1 − 減価率/2)= 初年度評価額 前年度評価額 × (1 − 減価率)= 2年目以降の評価額
減価率は耐用年数によって決まります。
| 耐用年数 | 減価率 |
|---|---|
| 5年 | 0.369 |
| 7年 | 0.280 |
| 10年 | 0.206 |
| 12年 | 0.175 |
| 15年 | 0.142 |
工作機械の法定耐用年数は一般的に10〜12年です。
最低評価額は取得価額の5%
評価額には下限があり、取得価額の5%が最低評価額になります。どれだけ古くなっても5%以下にはなりません。
つまり、取得価額1,000万円の機械は最終的に50万円の評価額が残り続け、毎年7,000円の税金がかかり続けます。
具体的な計算例
取得価額1,000万円、耐用年数10年(減価率0.206)の旋盤を例に計算します。
| 経過年数 | 評価額 | 年間税額(税率1.4%) |
|---|---|---|
| 取得時 | 1,000万円 | 14万円 |
| 3年後 | 約630万円 | 約8.8万円 |
| 5年後 | 約450万円 | 約6.3万円 |
| 10年後 | 約100万円 | 約1.4万円 |
| 15年後以降 | 50万円(下限) | 7,000円 |
15年以上経った機械でも毎年7,000円の税金がかかり続けます。複数台あれば積み重なります。
申告を忘れていた場合はどうなるか
償却資産税は毎年1月31日までに市区町村へ申告する義務があります。申告を忘れたり、除却した機械を申告しないままにしているケースは意外と多いです。
申告漏れのリスク
申告漏れが発覚した場合、以下のペナルティが課せられることがあります。
- 過少申告加算金:本来の税額の10%
- 重加算税:悪質と判断された場合は35%
- 延滞金:納期限から日数に応じて加算
「知らなかった」では済まないケースもあるため、毎年の申告はきちんと行うことが必要です。
すでに除却・売却した資産の申告漏れ
過去に処分した機械が申告書に残ったままになっているケースもあります。この場合は市区町村の税務担当窓口に相談することで修正できます。放置するより早めに対処した方が追徴額を抑えられます。
税負担を減らす3つの方法
使っていない機械の税負担を減らすには、主に3つの方法があります。
1. 売却して課税対象から外す
最もおすすめの方法です。使っていない機械を売却すれば、その時点で課税対象から外れます。
売却のメリットは税負担の軽減だけではありません。
- 売却収入が得られる
- 工場スペースが空く
- 管理コストがなくなる
「古い機械だから売れないだろう」と思っている方も多いですが、年式が古くても海外市場(アジア・中東など)では需要がある機種も少なくありません。まずは査定を依頼して価値を確認することをおすすめします。
2. 除却(廃棄)して帳簿から外す
売却できない場合は除却(廃棄)する方法があります。スクラップとして処分し、帳簿上の除却処理を行えば課税対象から外れます。
ただし廃棄にはコストがかかります。工作機械の廃棄費用は機種・重量によって異なりますが、数万円〜数十万円が一般的です。
売却と廃棄の比較:
| 売却 | 廃棄 | |
|---|---|---|
| お金の流れ | 収入になる | 費用がかかる |
| 手続き | 業者に依頼 | 産廃業者に依頼 |
| 税務処理 | 売却益・損の計上 | 除却損の計上 |
経済的に考えれば、まず売却を検討するのが合理的です。
3. 遊休資産として申告する
実務的にはあまり知られていませんが、一時的に稼働を休止している資産を「遊休資産」として申告することで、評価額の計算方法が変わる場合があります。ただしこれは市区町村によって扱いが異なるため、税理士に確認することをおすすめします。
売却と除却、税務上の処理の違い
使っていない機械を処分する際、会計・税務上の処理も整理しておきましょう。
売却した場合の処理
機械を売却した場合、帳簿価額と売却価格の差額が損益として計上されます。
- 売却価格 > 帳簿価額 → 売却益(課税対象)
- 売却価格 < 帳簿価額 → 売却損(損金算入)
帳簿価額がほぼゼロの古い機械でも売却できれば売却益が出ます。逆に帳簿価額が残っている機械を安く売ると売却損が出ますが、その分法人税の節税になります。
廃棄(除却)した場合の処理
廃棄した場合は「固定資産除却損」として損金算入できます。
帳簿価額が残っている機械を廃棄すると、その残額がそのまま損失として計上されるため、法人税の節税効果があります。
まとめ:使っていない機械は早めに動かすのが正解
この記事のポイントを整理します。
- 使っていない機械にも固定資産税(償却資産税)はかかる
- 評価額は毎年減少するが、取得価額の5%が下限として残り続ける
- 課税対象から外れるには売却か廃棄が必要
- 売却なら収入が得られる上に課税対象から外れる一石二鳥
工場の隅に置きっぱなしの機械は、スペースを取るだけでなく毎年税金を払い続けている状態です。使う予定がないなら、早めに売却か廃棄を検討することが経営上の合理的な判断です。
「まだ売れるかどうかわからない」という場合は、まず無料査定で現在の価値を確認することをおすすめします。価値がわかれば売却か廃棄かの判断もしやすくなります。














