プラ加工の超基礎解説3- サンドイッチ成形でコストダウン&エコ

執筆者 | 10月 4, 2025 | ブログ

プラスチック

プラスチック製品をつくる射出成形機に、サンドイッチ成形という射出方法があります。なぜサンドイッチかというと、再生原料を新品原料で挟むからです。再生原料を使うことでコストダウンとエコを実現でき、表面に新品原料を使っているので美観を損ないません。「プラ加工の超基礎解説」ではプラスチック加工の現場で登場する専門用語を、プラスチック加工をほとんど知らない人でも理解できる言葉を使って紹介します。

「ざっくり解説」サンドイッチ成形の概要

サンドイッチ成形の概要を紹介します。詳細については次の章で解説するので、ここではイメージをつかんでください。

中身はなんでもいい?

サンドイッチ成形では異なる2つの原料(樹脂)を使うわけですが、ポイントは、混ぜて使っているわけではなく、重ねて使っている点です。サンドイッチ成形でつくったプラスチック製品を切断すると、断面は「新品原料:再生原料:新品原料」となっています。

■サンドイッチ成形でつくったプラスチック製品の断面のイメージ

表面内部表面
新品原料(スキン層)再生原料(コア層)新品原料(スキン層)

プラスチック製品が外界と触れる部分をスキン層といい、これは新品原料でつくります。再生原料はプラスチック製品の内部に使い、これをコア層と呼びます。プラスチック製品のなかには、表面さえキレイであれば内部はなんでもよい、というものがあります。もちろん安全性や強度などに問題がなければ、という条件はつきますが。例えば、ものを収納するケースや自動車の内部に使われるパーツは、しばらくの間割れなければその役割を果たすことができます。

わけて射出することで層になる(あとから合体させているわけではない)

射出成形機は、原料となる樹脂をドロドロに溶かし、それに圧力をかけて金型のなかに射出し、冷やして固めてプラスチック製品をつくる機械です。サンドイッチ成形は、この射出成形機を使います。最初にスキン層をつくる新品原料を射出して、次にコア層をつくる再生原料を射出することで3層になります。2回の射出が終わったところで金型を開くとプラスチック製品ができています。つまり、スキン層とコア層を別々につくってあとから合体させているわけではありません。

サンドイッチ成形の構造

それではサンドイッチ成形の構造を、特徴ごとに解説していきます。

■射出成形機は1台でよい

サンドイッチ成形は2つの原料を2カ所から射出しますが、射出成形機の本体は1台で済みます。2つの原料が投入される金型も1個です。

■最初に新品原料を、次に再生原料を射出する

最初に射出するのはスキン層をつくる新品原料です。これで金型内の一部を満たします。続いて新品原料の内部に注入する形で、再生原料を射出して、金型の内部がすべて満たされます。新品原料の内部に入った再生原料が、外側に位置する新品原料を外に追い出すので、新品原料がスキン層(外部と触れる部分)に行き渡るのです。

■あとは同じ

原料の射出が終われば、冷ましてから金型を開いてプラスチック製品を取り出す工程は、通常の射出成形機での製造と同じです。

サンドイッチ成形のメリット

サンドイッチ成形の主な目的はコストダウンとエコですが、それ以外にもメリットがあります。

木や紙を使うことも

まず最大の目的あるコストダウンとエコを紹介します。再生原料=再生樹脂の原料は使用済みプラスチックです。これを回収、洗浄、異物除去、粉砕し、熱を加えてペレットにします。この再生ペレットを射出成形機に投入します。さらに、木のクズや古紙をくだいたものを再生ペレットにまぜて「かさまし」することで、CO2削減をさらに進めることができます。

抗菌剤を減らせる

抗菌機能を持たせるプラスチック製品をつくるとき、原料の樹脂に抗菌剤を混ざるのですが、サンドイッチ成形なら新品原料に混ぜるだけで済みます。プラスチック製品の表面にだけ抗菌機能があればよいからです。つまり、再生原料にまで抗菌剤を混ぜる必要がないので、抗菌剤の使用量を減らすことができこれもコストダウン&エコにつながります。

機能アップ①発泡性樹脂で軽量、断熱、材料削減

サンドイッチ成形によって、プラスチック製品の機能を向上させることもできます。コア層に発泡性樹脂を使用することで、軽量化できるうえに断熱性が向上します。発泡性樹脂は空気や窒素などのガスを内部に含ませたもので、ガスがつくる気泡がこれらの機能を生みます。また気泡によって樹脂の密度が下がるので樹脂の使用量を減らせ、やはりコストダウン&エコです。

ただし、気泡によって表面に微細な凹凸が生じることがあるので、見た目の品質が求められるスキン層には発泡性樹脂は適しません。サンドイッチ成形だからこそ、スキン層に見た目がよい新品原料を、コア層に機能を生み出す発泡性樹脂を使うことができるわけです。

機能アップ②強度を高めることが可能

サンドイッチ成形は、プラスチック製品の強度を高める手法としても有効です。コア層に、ガラス繊維を混ぜて強度を高めた再生樹脂を使用することで、全体としての強度が向上します。ただし、このガラス繊維入り再生樹脂は成形後の表面がざらつくため、外観が求められるスキン層には適していません。したがってこれも、コア層にのみ使用できるサンドイッチ成形ならではの使い方といえます。

既存の射出成形機を改造するだけでよい場合もある

サンドイッチ成形ができる射出成形機は特殊なものですが、なかには射出ユニットだけを交換するだけで既存の射出成形機本体を流用できるものもあります。つまり工場にある射出成形機に、サンドイッチ成形用の射出ユニットを取り付けるだけでサンドイッチ成形プラスチック製品をつくれる場合があります。既存の金型を流用することもできます。

サンドイッチ成形のデメリット

サンドイッチ成形のデメリットは主に次の3つです。

■外観はどうしても100%新品原料より劣る

再生原料のなかの不純物を100%完璧に取り除くことはできないので、いくら「コア層にしか使わない」といっても、サンドイッチ成形でつくったプラスチック製品の外観は、100%新品原料だけでつくったものより劣ってしまいます。

■樹脂の劣化による強度不足

再生原料は、溶かして固める工程を複数回繰り返しているので、樹脂としての物性が劣化している可能性があります。そのため100%新品原料だけでつくるものより強度が低下する可能性があります。

■特殊な機器が必要(初期投資がかかる)

サンドイッチ成形は特殊な技法なので、特殊な機器が必要になります。したがってサンドイッチ成形プラスチック製品をつくるには初期投資がかかります。