生産管理システムを導入する7つのメリット

執筆者 | 6月 4, 2024 | ブログ

システム

生産管理システムは、業務を効率化させるためのコンピュータ・システムです。金属加工会社の経営者が「DX(デジタルトランスフォーメーション)で生産性を上げたい」と考えたとき、生産管理システムは有効手段になるでしょう。

金属加工会社が生産管理システムを導入すると、工場と事務所のすべての仕事がパソコン上で管理できるようになり、さまざまなメリットが自社にもたらされます。

9つの機能が備わっている

生産管理システムを使ってできることを紹介します。金属加工会社は、仕事を受注して、原材料を購入して、作業者が工作機械で製品をつくり、在庫をして、販売して、代金を受け取って、経理処理をする、といった業務を行っていると思います。生産管理システムがあればそのすべてをパソコンの画面上で確認することができます。

生産管理システムでできることはシステムごとに異なるわけですが、主に次の9つの機能が備わっています。

  • 販売管理
  • 生産計画
  • 所要量計算
  • 購買管理
  • 在庫管理
  • 製造管理
  • 出荷管理
  • 原価管理
  • 予算管理

どれも金属加工会社の経営者にとって魅力的な機能ではないでしょうか。一つずつ確認していきましょう。

販売管理

生産管理システムの販売管理機能を使えば、受注から販売までのすべて工程を管理できます。つまり、受注、作業着手、製造、出荷、請求、売上のすべての現状が、パソコン上でわかります。

例えば金属加工会社が仕事Aを受注したとします。この情報を生産管理システムに入力するとパソコン画面で「仕事A:受注」と確認できるようになります。これで営業担当者だけでなく、経営者、工場長、作業者、経理担当者、倉庫担当者たちが同時に「うちの会社が仕事Aを受注した」と知ることができます。仕事Aはその後、作業者が製造に着手して、完成して出荷されるわけですが、その都度社内の全員がパソコン画面でリアルタイムで「仕事A:着手」「仕事A:完成」「仕事A:出荷」といったように確認できます。

倉庫担当者が「仕事A:着手」を確認できれば、しばらくすると仕事Aでつくられる製品が入庫するので「倉庫を空けておかなければならない」とわかります。経理担当者が「仕事A:出荷」を確認できれば、仕事Aの発注者に代金を請求する準備に取りかかることができます。このように販売管理機能があれば、社内の担当者たちは自分以外の人の仕事の状況がわかるので、準備ができたり問題点を確認できたりします。

生産計画

生産計画とは、どの製品を、いくつ、いくらで、いつまでに生産するかを予測するものです。生産管理システムを使わなくても生産計画はつくることができますが、作業が煩雑になるか、単純な生産計画しかつくれないでしょう。

生産管理システムで生産計画をつくれば、工場の製造計画に、原材料調達計画や人員配置計画、資金計画などをドッキングさせることができます。これにより例えば、X月に生産量が増えるので、それまでに工場の人員をY人増員しなければならない、といったことがわかります。もしくは、工場の稼働率がA%上がれば利益がB%増える、といったことも予測できるようになります。

所要量計算

もし今、工場長が原材料の調達に苦労していれば、所要量計算機能が助けになるでしょう。工場で使う原材料は、調達量が少なすぎると生産がストップしてしまいますし、調達量が多すぎると過剰在庫を抱えることになります。所要量計算機能は、原材料の適量を算出して、適切な購入タイミングを知らせてくれます。これで工場長は、さまざまな要素を考慮することなく、つまり苦労することなく、常に過不足なく原材料を調達できるようになります。

購買管理

購買管理機能は、原材料の適正価格での購入をサポートします。先ほど紹介した所要量計算機能は原材料の量の適正化を図りますが、こちらの購買管理機能は原材料の価格の適正化を狙います。例えば、原材料の値上がりが確実視されているときは、多少在庫を増やしても多く買っておきたいものです。購買管理機能は最適価格での購入タイミングを知らせてくれます。購買管理機能ではさらに、原材料の発注状況、受入状況、使用状況、代金の支払い状況もわかります。

在庫管理

金属加工会社にはさまざまな在庫が存在します。例えば、原材料の在庫、工作機械の部品の在庫、製造途中の在庫、完成品の在庫などです。在庫管理機能を使えば、工場と倉庫のなかのさまざまな在庫を管理できます。在庫は生産にもコストにも販売にも関わるので、工場長は在庫管理機能で生産もコストも販売も掌握できるようになります。

製造管理

製造管理機能は、工場内の作業を見える化します。工場内のラインや工作機械の稼働状況や製造実績、人員配置などが、事務所にあるパソコンでわかります。また工場の作業者は、製造管理機能を使って作業日報を入力することができます。工場内のことを工場外でも把握できるようになるので生産管理体制が強化されるでしょう。

出荷管理、原価管理、予算管理

出荷管理機能で出荷状況がわかるだけでなく、納期管理ができたり納品状況を把握できたりします。工場のコストダウンは原価計算から始まりますが、これは手間がかかるだけでなく専門の知識が必要になります。しかし原価管理機能があれば、数値を入力するだけで原価が算出されます。予算管理機能があれば、予算と実績を簡単に比較できるので、予算の執行状況や予算オーバーがすぐにわかります。

金属加工会社にもたらされるメリットは7つ

生産管理システムが金属加工会社にもたらすメリットは、少なくともこれだけあります。

■生産管理システムが金属加工会社にもたらす7つのメリット

  1. 業務の効率化
  2. リードタイム(所要時間)の短縮
  3. コスト削減
  4. データの見える化
  5. 情報共有
  6. 属人化の解消
  7. リスクヘッジ

生産管理システムがこれらのメリットをどのように生み出すのかみていきましょう。

まず業務の効率化ですが、生産管理システムを導入すると、工場内の業務と事務所内の業務のすべてをパソコン1台で監視できるようになるので、管理者の仕事が格段に効率化されます。しかも管理者は従業員からの伝聞ではなく、実質的に「直接」現場を監視できるので、現状をより正確に把握できるようになります。したがって適切に管理されるようになり、その結果従業員への指示が的確になり、従業員の仕事も効率化されます。

販売管理機能によって、担当者は自分の仕事の前工程と後工程の様子もわかるので準備がしやすくなり、リードタイムが減るでしょう。生産計画、所要量計算、購買管理の各機能によって製造にも原材料調達にも出荷にも無駄がなくなり、これはコスト削減を進めます。生産管理システムを使うと、すべての工程がデータ化されます。データは常に変化するものですが、その変化の度合いによって好調や異常を知ることができます。

生産管理システムは誰でも操作・閲覧できます。したがってすべての生産工程の情報を、全従業員で共有できるようになります。もちろん、操作・閲覧できる権限を特定の従業員にだけ与えることもできます。全従業員が自分の仕事以外の仕事を知れば、異動させやすくなります。これにより「この仕事はあの人にしかできない」という、業務の属人化を予防できます。

生産管理システムをアラート(注意警報)として使うことができるので、リスクヘッジができます。例えば在庫管理機能を使えば、在庫のだぶつきがすぐにわかります。製造管理機能を使えば、人員の割に実績が上がらない現場をすぐに特定できます。生産管理システムはリスクを見える化する仕組みと考えることもでき、リスクに気づけばヘッジできます。

どのように導入するのか、いくらするのか

金属加工会社が生産管理システムを導入する方法と料金を紹介します。

クラウド上のソフトを現場のパソコンで操作する

「金属加工会社に生産管理システムを導入する」とは、具体的には「現場にパソコンを置き、担当者が生産管理システムというソフトウェアを操作すること」です。ソフトウェアはパソコンにインストールすることもできますが、最近はクラウドでの利用が主流になっています。

システム会社から買い、フィッティングしてもらう

金属加工会社は生産管理システムをシステム会社から購入するわけですが、生産管理システムを自社の現場に合わせてカスタマイズする必要があります。これをフィッティングといいます。システム会社が売っている生産管理システムはいわば汎用品であり、この状態ですべての金属加工会社にマッチするわけではありません。現場の作業に合わせて生産管理システムの一部をつくり変えて、作業者たちが使いやすいようにします。

フィッティングの作業では、システム会社の担当者が工場で実際の作業をみてどのようにつくり変えるか検討します。このとき工場側も「こういうシステムにして欲しい」と要望を出します。ひとまず、その工場専用の生産管理システムが完成したら、現場の作業者が実際の作業で使ってみて不具合を洗い出します。その不具合を解消することで、生産管理システムが完全に完成します。

機能によって数十万~数百万円

生産管理システムの料金は、大企業のものになると億円単位になることも珍しくありませんが、中小の金属加工会社のものであれば相場は数十万円から数百万円です。料金に開きがあるのは機能によって差が出るからです。先ほど9つの機能を紹介しましたが、このすべてを搭載した生産管理システムは高額になります。逆に、例えば販売管理機能しか搭載されていない生産管理システムなら、月々数千円で済むこともあります。

しかし低価格の生産管理システムを購入してしまうと、業務の効率化やコストダウンなどのメリットも小さいものとなり、「もっと良い生産管理システムにしておけばよかった」と後悔することになりかねません。生産管理システムの購入予算と得たいメリットを明確にしたうえでシステム会社に相談するとよいでしょう。

金属加工会社自身が生産管理システムをつくってしまった例

金属加工会社にとって生産管理システムは今、「導入するかどうか」の局面から、「これでどれだけ生産性を上げていくか」の局面に移行しているかもしれません。筑紫野市(福岡県)の株式会社三松は中小の金属加工会社でありながら(つまりシステム会社ではないのに)、自社で生産管理システムをつくってしまいました。

システムエンジニアが金属加工会社にいる

同社の「三松統合生産管理システム」(Sanmatsu Integrated Network System、以下、SINS)は、受注処理、材料と外注の発注、材料と外注の受け入れ、工程管理、出荷処理を一元管理できます。同社はSINSを、1)顧客の製品をいつ、どこで、誰が、どのように製造したかを把握して、2)製造に必要な情報をさまざまな角度で分析して見える化・見せる化して、3)万全な製造代行サービス体制を支えるため、に開発・導入しました。ニーズと目的を明確にしたうえでSINSを導入したことがわかります。

SINSでは例えば、工場内の工作機械を社内LANでつないで、遠隔地で稼働状況と稼働実績をリアルタイムで把握できるようにしました。さらに塗装ラインに温度センサーと光電センサーを設置して、こちらもリアルタイムで塗装中の製品の状態を把握することで生産の最適化を図っています。三松はSINSを開発するにあたってシステムエンジニアを雇用しています。

経営者が旗振り役になったほうがよい

金属加工会社にとって、生産管理システムを導入するデメリットはコストしかないでしょう。そしてそのコストも生産管理システムが順調に稼働すれば直に回収できるはずです。

生産管理システムの導入では、経営者がリーダーシップを執ることをおすすめします。投資額が大きくなることに加えて、従業員たちの仕事のやり方も大きく変わってくるからです。全従業員が生産管理システムをフル活用して仕事をすることで高い効果を狙うことができます。これも働き方改革になるので、旗振り役は経営者のほうがよいわけです。