「止まらない工場」には IoTゲートウェイが必要

執筆者 | 4月 16, 2024 | ブログ

IoT

なぜ金属加工会社にIoTゲートウェイが必要になるのか。その答えはこちら。

●「止まらない工場」にIoTゲートウェイが必要だから

金属加工会社は、工場の稼働率を上げることに苦心していないでしょうか。工場の稼働率の最高値は原則100%であり、つまり工作機械や生産設備が一刻も休むことなく稼働し続けている状態が工場の理想形になります。稼働率を高めて「止まらない工場」をつくるには工場のIoT化が欠かせませんが、IoTゲートウェイはそのときに使う装置です。

IoTとは、IoTゲートウェイとは

IoTゲートウェイと止まらない工場の関係をみる前に、IoTとIoTゲートウェイの基礎知識を確認しておきます。

モノとインターネットをつなぐと遠隔操作ができる

IoTは「モノのインターネット化」という意味で、あらゆるモノをインターネットにつないでいこうという取り組みです。例えば、パソコンやスマホはインターネットにつなげるものとしておなじみですが、IoTではそれ以外のモノもどんどんインターネットにつなげていきます。

例えば、家の暖房器具(モノ)をインターネットにつなぐと、家主が外にいるときに自分のスマホを操作して家の暖房器具のスイッチを入れることができます。これにより、帰宅したときに部屋が暖かくなっています。また、自動車(モノ)をインターネットにつなぐと、運転席のモニターで情報が得られたり、自動運転に必要なデータのやりとりが可能になったりします。

このようにモノをインターネットをつなぐと、そのモノを遠隔操作できるようになり生活が便利になります。

IoTゲートウェイ

続いてIoTゲートウェイを解説します。ゲートウェイは玄関という意味なのですが、では「IoTの玄関」はどのような役割を持つのでしょうか。

手に持っているスマホだけをインターネットにつなげるのであれば、IoTゲートウェイは要りません。スマホのなかに搭載されているインターネットに接続する装置だけで十分です。また、机の上のスマホが10台あっても、それぞれが独自にインターネットにつながっているのであれば、やはりIoTゲートウェイは不要です。

非効率ではない1個のモノ→1個のインターネット接続装置→1本のルートでインターネット接続
非効率10個のモノ→10個のインターネット接続装置→10本のルートでインターネット接続
効率的10個のモノ→10個のインターネット接続装置→IoTゲートウェイ→1本のルートでインターネット接続

しかし、家のなかのあらゆるモノをインターネットにつなげようとすると、整理が必要になり、それにはIoTゲートウェイが便利です。

例えば10個のモノを10本のルートでインターネットにつなぐと、無駄が多くなります。そこでIoTゲートウェイで「整理すれば」10個のモノを1本のルートでインターネットにつなぐことができます。IoTゲートウェイは「10個のモノを1本のルートに整理する」イメージです。

IoTゲートウェイはどのように整理しているのか

ではIoTゲートウェイは、複数のインターネット接続をどのように整理しているのでしょうか。

10個のモノに取りつけたセンサーでモノの状態をデータ化して、そのデータをインターネットで遠隔地のパソコンに送信するとします。このときIoTゲートウェイがあれば、インターネットの接続に必要なプロトコルや通信規格を制御できるので、10個のモノがすべてスムーズにインターネットに接続できるようになります。

さらにIoTゲートウェイには、モノに取りつけたセンサーなどのデバイスを管理、制御する機能もあります。10個のモノに取りつけたデバイスのパスワードの更新、アクセス許可、通信状況の確認を、IoTゲートウェイ1個で行うことができます。また10個のモノを10本のルートを使ってインターネットに接続してしまうと、通信費用がかさんでしまいます。IoTゲートウェイ1個にまとめることで通信費用を適正化できます。

工場のIoTとなると、とても10個くらいでは済まないでしょう。100個、1,000個のモノをインターネットにつなげるにはIoTゲートウェイが不可欠です。

工場で予知保全にIoTゲートウェイを使う

IoTゲートウェイを使って金属加工会社の工場をIoT化すると、さまざまなことができるようになります。IoTは工場の進化に欠かせない手法であり、これこそ金属加工会社のDXです。ここでは工場の進化した形の一つである、予知保全について解説します。IoTゲートウェイがどのように予知保全を実現して、それにより金属加工会社にどのようなメリットがもたらされるのかみていきます。

事後保全より予防保全より上位概念の予知保全

工作機械を動かし続けることは、止めない工場の大前提になります。そして工作機械を動かし続けるには保全が必要です。保全をすることで常に規定の出力、能力、機能を出せるようになります。工作機械に不具合が起きたときに保全を行うことを、事後保全といいます。事後保全では、不具合の原因を究明してから工作機械を修理することになるので、工作機械の停止時間が長くなります。

そこで多くの工場では、予防保全を行っていると思います。不具合が起きていなくても予防的に保全を行うことで、工作機械を止める時間を短くすることができます。ただ予防保全を行うには、定期的に保全を実施する必要があります。そのため、チェックが必要ないのにチェックをしたり、まだ使える部品を交換したりするので、無駄な作業やコストが発生します。

そこで予知保全が脚光を浴びているわけです。「不具合が起きそう」「壊れそう」といったことを予知できたときに保全を行います。予知保全なら、どの部品が「壊れそう」なのかわかるので、その部品を交換するだけで済みます。また「壊れそう」なだけで実際は壊れていないので、保全を実施するギリギリまで工作機械を動かすことができるので、生産の落ち込みは最小限に食い止めることができます。

センサーが予知保全を可能にし、IoTが予知保全の仕事を楽にする

予知保全を行うには、工作機械にセンサーをつける必要があります。例えば工作機械に振動センサーを取りつけると、異常な振動が出たときにすぐにわかります。工作機械にベアリングが使われていたら、ベアリングが摩耗して振動が大きくなったのではないか、と推測できます。

温度センサーを取りつければ、工作機械が異常高温になったときにわかります。冷却用のオイルが劣化しているのかもしれませんし、冷却装置が壊れたのかもしれません。いずれにしても、不良品が多くなった原因を素早く特定できます。電流センサーがあれば、工作機械の出力が落ちた原因が電気にあると推測できます。ほかにも物体検出センサー、圧力センサー、位置センサー、加速度センサー、CO2 センサーなどが工作機械の予知保全に役立ちます。

工作機械に取りつけるセンサーの数が増えるほど予知がしやすくなり、「壊れそう」な場所の特定が容易になります。しかしこれだけでは担当者が工作機械のところにいってセンサーをチェックしなければならず、センサーの数が増えるほど、センサーを取りつけた工作機械が多くなるほどチェック作業が大変になります。

そこでIoTが活躍します。センサーをインターネットにつなげば、センサーが検知した工作機械の状態に関するデータがサーバーに送られ、事務所のパソコンでそれを確認できるようになります。工場内に工作機械が100台あっても1,000台あっても、事務所にいる1人が1台のパソコンでチェックできるわけです。そして大量の工作機械のセンサーをインターネットにつなげるには「整理」が必要になるのでIoTゲートウェイが必要になります。

工作機械IoTゲートウェイの事例

金属加工会社などの製造業企業は、IoTゲートウェイをどのように使っているのでしょうか。具体事例を知ることで自社工場をIoT化するメリットをリアルに感じることができます。

異常を知らせるパトランプを一括管理

製造業企業A社は、生産の自動化(つまり無人化)を進めるため、人の操作が要らない生産設備を導入してきました。しかし生産設備の異常や故障は人の目で確認しなければなりません。そこで無人化した生産設備に異常を知らせる信号灯(パトランプ)を取りつけ、パトランプが点灯したら担当者が調べて直す、という作業をしていました。しかしこのパトランプ方式は、担当者がいつも目視でしなければならず、そのために担当者は工場を巡回していなければなりません。それでもパトランプの点灯を見落とすこともありました。

そこでA社は、パトランプの点灯をデジタルデータにする変換器を取りつけ、そのデータをインターネットに送信し、管理室のパソコンで確認できるようにしました。IoT化したわけです。

これにより担当者は管理室のパソコン画面を確認するだけで工場内のすべての無人生産設備をチェックできるようになりました。しかも巡回する必要がないので、この担当者はほかの仕事も担当できるようになりました。無人生産設備の状態を確実にチェックできるようになっただけでなく、生産性も向上させたわけです。

生産状態の確認と省エネ施策を同時に行える

B社は省エネに取り組むことにしました。そこで工場内のすべての機械に電力計を取りつけ、電力値をデジタルデータに変えて、IoTでインターネットで収集できるようにしました。電力値によって機械が、1)稼働している、2)稼働していないが電源が入っている、3)電源が入っていない(もちろん稼働していない)、のどの状態にあるのかリアルタイムで把握できるようになりました。

機械の稼働状況と電源オン・オフ状況と生産量を比較することで、機械ごとの電力使用の効率性が判明しました。効率よく電力を使っている機械の運用方法を見本にして、電力使用が非効率な機械の運用を見直すことで省エネを実現しました。

こんなこともできる

ある会社は、工作機械に取りつけた複数のセンサーが集めたデータをAIに分析させることにしました。AIは膨大なデータのなかから滅多に発生しないデータをみつけ、それを異常として担当者にメールで知らせます。

ある会社は工作機械の切削抵抗(切削力)のデータをセンサーで集めることにしました。そのデータをインターネットでパソコンに送ることで、監視者がリアルタイムですべての工作機械の切削抵抗をチェックできるようになりました。切削抵抗のデータと不良品発生率のデータを比較することで、最適な切削抵抗をみつけることができます。このように工場のIoT化は、アイデア次第でいかようにも形を変えることができます。

後づけできることが大きい

工作機械にセンサーを取りつけ、センサーが計測した値をデータ化し、過去のデータの平均値と現在のデータを比較すれば、異常が起きているかどうか推測できます。工作機械に取りつけたセンサーをIoT化すれば、センサーが計測したデータを遠隔地で確認できます。

そして工作機械が増えてセンサーが増えると、大量のIoTが必要になるので、IoTゲートウェイで整理する必要が生まれます。IoTゲートウェイによって通信環境がよくなるので、1人の担当者で大量のデータを確認できるようになるので生産性が向上します。しかもIoTで集めたデータで工作機械の稼働を最適化できるので、これも生産性を高めることに貢献します。

IoTとIoTゲートウェイはこれほど大きなメリットを金属加工会社にもたらすわけですが、もう一つ重要なメリットがあります。それは後づけできることです。金属加工会社はIoT機器やIoTゲートウェイを購入して、今ある工作機械に取りつければよいのです。つまりIoTゲートウェイ入りの機械を新たに購入する必要がないのは、工場のIoT化は比較的手軽に実施できます。自社工場のIoT化は予算に応じて進めていくことができるのです。