IoT導入はどう進んでいる?光洋鋳造の事例

執筆者 | 2月 6, 2023 | ブログ

IoT

三重県伊賀市にある金属加工会社「光洋鋳造株式会社」(以下、光洋鋳造)をご存じでしょうか。金属加工会社が全国に数多く存在している中でも、地方拠点でありながら業界内では有名な老舗企業の一つです。

企業ごとに特色のある金属加工の分野ですが、光洋鋳造では早い段階からIoT化に積極的に取り組んでいるようです。具体的にはどのようなことが現場で起こっているのでしょうか?

光洋鋳造とはどんな会社?

光洋鋳造は鉄などの金属加工をメインに扱っている企業。もともとは東大阪の地で創業、以来60年に渡り鋳造を生業としてきました。1997年より本社および工場を三重県の伊賀市に移転。国内大手メーカー向けの部品をはじめ、幅広い分野へ貢献を続けています。

鋳造のメリットは、安価で量産が可能なことですが、この光洋鋳造では「ひと味違った鋳造会社を目指す」を企業ポリシーとし、多品種少量生産に特化した事業活動が行われているのです。その領域は非常に広く、自動車用金型から風力発電機器、アルミ精錬用部材まで実に幅広い分野の製品を製作。

鋳造特有の、材料の無駄が出ない点や高い耐久性、製作期間の短縮といった利点を存分に生かして一般産業用の部品からオーダーメイドの景観構造物までも手掛けているようです。金属加工会社としての強みは、なんと言っても社内で3D図面を作成することができる点。再現正確性を高いレベルで実現できることで、効率的な製造へとつながっているのに加え、マシニングセンタやCADの導入により、発泡模型製作は完全内製化されています。さらに、フルモールド鋳造法※の長所を生かし、超短納期ともいえるスピーディーな生産が可能であることから顧客の要望にしっかりと応えられる体制が築かれています。

※フルモールド鋳造法…発泡スチロール模型が溶湯に置換され、製品となる鋳造法

光洋鋳造の製品

「ハートのこもった鋳物づくり」という企業哲学で生み出されている製品はどんなものがあるのでしょうか。代表的な製品は下記のようなものです。

【プレス用金型(DA/DB LWR)】

プレス用金型(DA/DB LWR)
引用元:光洋鋳造株式会社
画像:https://koyochuzo.co.jp/product/car/

ホンダを中心にトヨタ、マツダと言った国内有数自動車メーカーに鋳造品が採用されてきた実績があります。

【アルミ精錬釜】

引用元:光洋鋳造株式会社
画像:https://koyochuzo.co.jp/product/aluminum/

20年以上の実績があり、現場の特性に合わせた形状の高品質製品を納品し続けています。

【インペラー】

引用元:光洋鋳造株式会社
画像:https://koyochuzo.co.jp/product/general/

三次元形状のインペラーを発泡模型で製作。フルモールド鋳造にて高精度の製品を短納期かつ低コストで実現しています。

これらはほんの一例です。長年技術を磨き、フルモールド鋳造に携わってきた光洋鋳造。自動車用の金型から、一般産業用そして、鋳造の得意分野を生かした景観構造物といった新しい挑戦にも積極的に取り組んでいる企業です。

IoTの導入

光洋鋳造では30年もの歳月をかけて技術力の向上と生産システムの見直しに取り組んできました。そして、注目すべきが積極的に推進されてきたIoTの取り組み。金属加工とIoT。ほんの10年前までは連想しにくかった両者が、今や切っても切り離せない関係になりつつあるのです。

光洋鋳造では、本社事務所はもちろんのこと鋳造現場にもWi-fi環境が整えられており、タブレット端末の使用で作業手順が軽減されより多くのデータを蓄積し、品質や生産性が日々向上しているのです。その象徴的な存在、IoT推進チームは6年ほど前に組織編成された部門です。このチームが主導して、もともと導入していたデジタル帳票システムに加えて、生産工程のデータ化や、フィードバックの見える化を実現。高品質な製品を、より効率的に生産する体制が整備されたのです。

また、三次元CAD等でリモートワークが可能になり効率向上に貢献していると考えられます。さらに、近年はRPA※を使用した無人解析も導入。実に毎月200件ほどの解析を人的コストに頼らずに稼働させることで、品質の安定に貢献するのはもちろん、働き方改革の観点からも企業として前進しています。

※RPA…事務系の定型作業を自動化・代行するツール。人工的な知能を持たせた機械やソフトウェアがビッグデータを分析して自律的に判断するAIとは異なり、事前に設定したルールどおりに稼働し、業務を自動化するシステム。業務のルールや判断基準は人間が定めます。

解析ソフト、測定器の導入で現場が変わる

鋳造のための発砲模型の精度が、製品の仕上がりに大きく影響するフルモールド鋳造。長所と短所が表裏一体とも言えるため、鋳型が完成した段階での確認は必須となっています。また、厚みや部位特徴により歪み(ひずみ)が生じることがあるのも金属加工の課題の一つです。このひずみへの対策として光洋鋳造では鋳造解析ソフトを導入。解析シミュレーションにより事前に問題箇所を可視化することができるようになったのです。

設計段階から、オーダーに対しての現実的な修正提案を行うことが可能になり、生産工程の効率化および製品の高品質化につながっているといえます。さらに、三次元測定器を用いた製品の高精度化が推進されており、難易度の高い案件においても短期間の納期での対応を可能にしています。型管理は一括してCADデータを使用しているため紛失の防止や現場の省スペース化といった環境改善も実現しています。このようにデジタル化、ひいてはDX化を見越した形のITツールの積極的な導入が功を奏し、製品不良率の半減といった目に見えるデータとして結果にもつながっているのです。

会社概要

会社名光洋鋳造株式会社
創業1955年2月
資本金4,800万円
業種銑鉄鋳物業
従業員数50名 2023年1月現在
光洋鋳造株式会社 会社概要

時代とともに

今回は、金属加工会社である光洋鋳造株式会社を取り上げました。創業70年近い老舗企業でありながら、既存の枠にとらわれることなく、新しい領域へのチャレンジや、時代の波に乗ったIoT化の推進など積極的に“変化”していく企業姿勢が浮き彫りになったかと思います。その動きは、製品の精度などの課題解消や生産の効率向上だけでなく、働き方の側面から見ても良い影響へと波及しているようです。

その根底には「ひと味ちがった金属加工会社を目指す」というトップの思いや、「ハートのこもった鋳物づくり」という企業哲学が見て取れます。地方から日本の産業を元気にする、そんなパワーも感じられたのではないでしょうか。今後の企業活動にもおおいに期待できそうです。