工場の安全対策でおさえておくポイントは?

執筆者 | 1月 12, 2023 | ブログ

工場 骨折

今回のトピックは工場の安全対策についてです。日々工場を安心安全に稼働させていくために、取り入れられる様々な方法があります。その中でも安全対策は第一に優先されるべきですが、具体的に何を重点的に行えば良いのでしょうか。きちんとした安全対策ルールを設けておくことにより、予期せぬトラブルも未然に防止できたり、稼働効率がアップすることで業績の工場へつながることもあります。

安全対策とひと口に言っても、企業としてできることと、従業員スタッフそのために、会社ができることの他、従業員が個々で努力しなければならないこともあります。この記事では、それぞれ押さえておきたいポイントを確認していきたいと思います。

安全ルールの徹底

多数の従業員が業務に従事し、稼働している工場においては、共通のルールに従って、全員が留意しながら作業を進めていくことが大事です。ルールがない状態ではここのメンバーが自分の考えや価値観に基づいて行動してしまうことで思わぬ事故やトラブルが発生する可能性も否定できません。

それほどに現場全員の共通認識というものは重要であり、故意でなくても生産効率や、業績に関わる問題につながることもありますので安全対策に取り掛かる第一歩としてルールの制定を検討しましょう。ルールを実際に制定し、工場を稼働していった場合のメリットは主に下記のようなものがあります。

トラブルを未然に防止することができる

ルールが設けられることで、様々なリスクを回避し、トラブルの発生を未然に防ぐことができると考えられます。もしも、不適切であった慣習が引き続き行われたとしても、改善ルールを提案し、より良いルールのもとで稼働が行われれば、メンバーが納得のいく環境で安全に業務を遂行していくことができるのです。

さらに、ルールを制定することは、全員がふだんから危機意識を持つことにもつながります。高い安全意識をもって仕事に取り組むことでより安全対策が徹底され、よい循環を生みます。

業務レベルを一定水準にすることができる

共通ルールのもとで業務が行われているということは、即ち、すべての従業員が同じ水準で業務を進められるようになるという利点もあります。例えば、何か新しく導入されるシステムや業務について説明するような場合でも、マニュアルに沿って説明が伝達されるため、理解も早く進み、全体の進行もスムーズに運べるはずです。

業績の向上が期待できる

ルールがない工場では概して不満が出やすいという傾向があるようです。ルールが制定されていれば、全員が共通認識を持って業務に取り組むことができるので、モチベーションも高められやすく、それにより業績の向上へいい影響を与えることが多いようです。

設定されたルールにより工程が増えることもあります。それにより作業効率が一時的に落ちることもあるでしょう。しかし、大きな事故や、従業員の被る危険を避けるために作られた必要不可欠なものなので、しっかりと順守しなければなりません。どのような危険があるのか1人ひとりがしっかり把握し、安全のためのルールは全従業員で徹底して守る必要があります。

トラブルを未然に防ぐ意識を徹底する方法は?

工場内では様々な機械を使用しており、大きな重量のものはもちろん、化学物質が発生するものなど、少しのミスでも重大な事故につながる要因は数えきれません。発生しやすい事故としては、はさまれ巻き込まれ事故や、転倒転落、金属などの飛来物による事故など、製造業ならではの事例が多いです。操作を誤ったことによる切り傷などの負傷事故も多く発生しています。

安全対策を怠れば、大きな事故は避けられず、命の危険も隣り合わせです。製造業において安全対策は決して手抜きをしてはいけない領域なのです。何か危険なことがあれば従業員同士でホウレンソウ(報告、連絡、相談)を行い、対策を立てて危機意識を連携していくことも大変有効です。

「ホウレンソウ」の他には、「ヒヤリハット」も意識されるべきです。ヒヤリハットとは、工場などの作業場で事故には至らなかったものの「ヒヤリとする」「はっとする」ような局面のことを言います。米国のハーバート・ウィリアム・ハインリッヒの数千件の労働災害の調査によれば、「一件の重大事故につながるまでに、29件の軽い事故および、300件のヒヤリハットが起こっている」という法則を1931年に著書で発表しています。これは「ハインリッヒの法則」とも呼ばれ、現代でも労働災害を防ぐための考え方として活用されています。

この法則を元に考えれば、事故を防ぐために軽い事故やヒヤリハットもできるだけ防いでおかなければならないということになります。ヒヤリハットを記録していく作業もとても大切だと言えます。ヒヤリハットが発生した場合は、これを漏れなく記録し、関連メンバーに報告、全体にも共有します。改善が必要な場合は、管理者に相談し、具体的な対策を考案していきます。事故につながるような事例をすべて記録し、全員に共有されることが重大な事故の防止に必ずつながります。ホウレンソウとヒヤリハット、現場におけるこの二つの実施が製造業の安全の行方を左右しますのでしっかりと意識しておきましょう。

危険予知訓練とは

現場で実際に、危険に直面したときやその兆候を感じるためには、危険に対する感受性や集中力、問題解決能力を個々に身につけておくことが大事です。そのために有効な「KYT」と呼ばれる訓練があります。危険=Kiken、予知=Yochi、訓練=Training それぞれの頭文字を取った造語であり、危険に対する感受性や集中力、問題解決能力を高めるために行われます。

KYTの中には「基礎4ラウンド法」と呼ばれる訓練手法などがあり、事故が発生しそうな状況のイラストを見ながら行ったり、実際の現場を見ながら行ったりできます。4ラウンドの手順は下記のように行います。

  • ラウンド1:潜在的な危険のあぶり出し
  • ラウンド2:重要度の分類
  • ラウンド3:重要度の高い項目に対して、対策方法の案出し
  • ラウンド4:チーム共通のルールへと制定

潜在的な危険のあぶり出し

訓練メンバー全員でイラストもしくは現場を見て、考えられる危険を挙げていきます。ポイントは、どんな意見も否定せず、思いつく限りの問題を洗い出すことです。挙げられた危険は、ホワイトボードなどに書き上げていき一覧にしておきます。 ※活発に意見を出し合えるよう、5名程度が適当です。

重要度の分類

ラウンド1で挙がった危険項目の中でも、重要だと考える項目に印をつけます。その中から、再び重要なものを絞り込み、◎をつけて「危険ポイント」に設定します。

例えば、各々が重要だと思う項目をメモに書き、3名以上が重要とした項目を◎などとしても良いかもしれません。2名以上のものは○にする、最重要は◎と段階的に設定できればわかりやすいです。〇がない項目、◯がついた項目、◎がついた項目と、3段階に区分した後、特に重要と判断できる◎の「危険ポイント」を全員で復唱確認します。

重要度の高い項目に対して、対策方法の案出し

ラウンド2で挙げられた「危険ポイント」を解決する対策法について、意見を出し合います。出た対策法も一覧にしましょう。

チーム共通のルールへと制定

ラウンド3で挙がった対策法の中で、実際に実施する項目を話し合い、決定したらマークをつけて、「チーム共通ルール」へと制定します。共通ルールは、掲示板等全体に毎日見える場所に貼り出すと効果的です。全ラウンドの最後に、まとめとして「危険ポイント」と「チーム行動目標」を指差し、復唱確認を行います。

工場の5Sとは?

どんな職場であれ、安全対策は必要です。製造業では特に、危険と隣り合わせということもあり、工場内で働く際のいわゆる「5S」への注意を掲げている現場も多いと思います。改めてその内容も確認しておきましょう。

5Sとは、「整理」、「整頓」、「掃除」、「清潔」、「しつけ」のそれぞれのローマ表記から頭文字をとったもの。これら「5S」に力を入れている現場では、職場環境を良い状態で維持することができます。ひいてはそれが、安全対策にもつながるため、重要視している製造業が多いのです。しつけとは、従業員が業務や設備を十分に理解し、注意しながら業務を進めることができるようにするための教育です。整理、整頓、掃除、清潔は、業務環境に直接的に影響し、効率や安全面にも直結しています。

しかしながら、これらの5Sは基本的であればあるほど、それが習慣化されなければ良い結果につながりにくく徹底することも難しくなります。不要なものは処分しスペースを確保して、必要なものをすぐに見つけやすい状態にしたり(整理)、全員がものを定位置に保管する(整頓)。働く環境や使用する設備機械をきれいにして良い状態にする(掃除)、またそれを維持する(清潔)。 これらはすべて連動していますので、全員が普段から心がけを怠らずにルールとして守ることで、安全対策と生産アップが目指せることになります。

終わりに

今回の記事では、工場の安全対策について押さえておきたいポイントをまとめました。上記で挙げたハード面はもちろんのこと、近年の猛暑により熱中症対策や、従業員の体調管理なども安全対策の一環として取り組んでいる企業が増えています。

従業員が安心して仕事ができるように、ソフト面、ハード面、両方向から工場の安全対策を徹底することが必要だと言えます。ルールを作り全員で守りながら仕事をすることで、未然にトラブルも防止できます。