
※本記事は2026年10月2日に、資金調達方法の説明の見直しと、近年の資金繰りを取り巻く環境変化を反映して更新しました。
今回のトピックは製造業の資金繰りについてです。「資金繰りに苦労している」と見聞きしたり、また、実感されている方も少なくないはず。製造業はさまざまな業種の中でも資金繰りが難しいとされる業種なのです。当社にも、資金繰りの厳しさから機械の買取とリースを組み合わせたご相談をいただくことがあります。記事の後半で実際の事例もご紹介します。
受注が常に一定であることは稀で、また、加工品を輸出している場合は、現在の情勢不安や、国際的な景気の波にも影響を受けるからです。近年は、半導体をはじめとする部材の供給不足や、原材料価格の高騰、為替の変動による輸入コストの上昇など、資金繰りに影響を与える外部要因も増えており、製造業にとって資金管理の重要性はますます高まっています。そんな製造業の資金繰りについて、「管理にコツはあるのか」「改善する方策にはどんなものがあるのか」など、おさえておきたいポイントをまとめていきます。
製造業の資金管理はなぜ難しい?
製造業の資金繰りが厳しくなりやすい理由には、製造業ならではの下記の背景があります。
- 膨大な初期コストが必要
- 受注が増えるほど資金管理が大変になる
- 海外企業に受注を奪われやすい
- 受注案件が景気に大きく影響される
- 売掛債権の回収サイトの問題
この中でもやはり、初期にかかるコストが膨大になることが圧倒的に資金繰りに影響する要因です。資金調達が厳しい場合の対処法はどんなものがあるのでしょうか。それぞれの背景に沿った対処法も見ていきましょう。
1.膨大な初期コストが必要
製造業では受注後、仕事に着手できるまでのコストが多くかかります。原材料の仕入れ、外注費や人件費、光熱費まであらゆるコストの支払いが先に発生するからです。これらの費用は概して売り上げが発生する前に支払いが行われるため初期コストを膨らませてしまうのです。安定的に受注から製造、販売までのサイクルを回すためには運転資金として2-3ヶ月分のコストをストックしておくことが理想と言われています。とくに工作機械などの生産設備は耐用年数が長く、一度に多額の資金が固定資産に変わってしまうため、設備投資のタイミングと手元の運転資金のバランスを見ながら計画を立てる必要があります。老朽化した機械を売却し、その資金を新しい設備投資や運転資金に充てるという選択肢も、資金繰りを圧迫しないための一つの手段です。
2.受注が増えるほど資金管理が大変になる
製造業では、受注したタイミングで相当の仕入れや外注を行います。つまり、大きな受注案件になるとそれに伴い初期に準備しなければならない資金が大きくなるのです。増加運転資金と呼ばれるものです。大口の受注により、キャッシュが大量に流出してしまうことで資金繰りが悪化するようなケースも珍しくなく、結果的に倒産につながるような可能性もあるのです。
大きな案件を受注すること自体は、企業の成長の可能性も秘めてるものの、経営的にはマイナスに転じる可能性があることから製造業の資金管理が厳しい要因にもなっているわけです。対処法として、受注が発生した段階から、迅速に金融機関に増加運転資金を貸付けてもらうか、仕入れ先に支払いのタイミング延期を交渉するなど事前の対応が考えられます。
3.海外企業に受注を奪われやすい
製造業の特徴として、ライバルが海外の企業であることも無視できません。中小企業では実際にシェアを海外企業に奪われることが起こっています。経済成長真っ只中の中国や東南アジアの企業は技術発展によって、より安価で大量生産を行うことができるため、受注がシフトしていったしまうことになるでしょう。
受注が奪われる反面、人件費などの固定費は継続的に発生するため資金繰りは厳しくなります。そこで、取引先との関係性をより強固にし、長期的な契約を前提とするなど、たやすく受注を奪われないような環境や企業経営を構築することが大事です。企業独自の技術は海外企業との差別化につながりますし、リレーションシップを発揮していくこともこれからの時代はますます重要といえます。なお、近年の急激な円安局面では、日本からの輸出製品が相対的に割安になることで受注が戻ってくるケースもあり、為替の動向次第で海外企業との競争環境は変化します。一方で、原材料や部品を輸入に頼っている場合は、円安が仕入れコストの上昇という形で資金繰りを圧迫する要因にもなるため、為替変動の影響を両面から見ておく必要があります。
4.受注案件が景気に大きく影響される
国際的な経営状況に影響を受けやすいのも製造業ならではの特徴。国際的に景気が悪化すると、日本のようにモノを作り海外に向けて売っている国はどうしても受注が減少します。リーマンショックや新型コロナウイルス禍での局面を思い出してください。世界的に経済が後退すると、製造業の受注は一気に停滞してしまいます。
このような不況の際にも、従業員の雇用維持など企業運営を図ろうとすると固定費の支払いなどは避けられません。資金繰りの問題が一気に明るみに出ることになります。業界全体に言えることですが、国際的な景気の波の影響を最前線で受けることになるのです。近年では、世界的な半導体不足や部材の供給網の混乱により、受注はあっても必要な部材が調達できず製造・納品が遅れ、結果として入金も遅れるというケースも見られました。景気後退だけでなく、サプライチェーンの混乱によっても資金繰りが圧迫されうることは、あわせて念頭に置いておきたいポイントです。
対処法としては、景気に左右されない資金、つまり内部留保などの財政基盤をしっかりと持っておくことが大事です。また、日頃から固定費をできる限り削減する企業努力をしておくことで、受注減少時に備えられるようになります。
5.売掛債権の回収サイトの問題
製造業では一般的に、売掛債権の回収サイトが長くなります。2,3ヶ月先の期日設定が一般的です。具体的には、仕入れなどで初期コストが発生、現金が流出してから、製品を製造する期間に入り、出荷後、入金までに2,3ヶ月はかかる計算になります。繰り返しになりますが、数ヶ月分の運転資金を手元にストックしておき、資金繰りに対処していける体力が必要になります。
サイトの長さで資金繰りが厳しくなっている場合には、取引先との交渉で回収サイトを短くしてもらう、あるいは一定以上の運転資金を常にもっておくことが対処法としてあげられます。また、回収サイトの短縮だけでなく、仕入れ先への支払いサイトを可能な範囲で延ばしてもらう交渉も、資金繰り改善の有効な手段です。自社の支払いサイトと取引先からの回収サイトの差(キャッシュコンバージョンサイクル)が開けば開くほど、その間の運転資金を自前で用意する必要が出てくるため、回収と支払い、両方のサイトを意識して交渉していくことが大切です。
受注から資金改修までの流れは?
ここで、仕事の受注があり、製品を製造、出荷して代金を回収するまでの一連の流れを確認しておきましょう。(※一般的な製造業におけるフローとなります)
- 仕事を受注
- 原材料の仕入れ及び買掛金の発生
- 買掛金(仕入れ代金)の支払い
- 外注先への業務発注
- 外注先に対する外注費の支払い
- 製品製造にあたり、光熱費・労務費などの諸経費が発生
- 諸経費の支払い
- 製造→完成
- 製品の販売及び売掛金の発生
- 売掛金請求
- 売掛金の入金(入金期日)
企業によりもちろん多少の違いはあるものの、共通して言えるのはフローの序盤で「支払い」ばかりが連続してしまうのが製造業の大きな特徴。製品を納品して、請求を出し、やっと入金となる局面でも、取引先によっては入金までに数ヶ月かかる場合もあります。つまりなかなか代金回収とならないわけです。
製造業は、多くの工程を経て製品が完成し、それまでに時間がかかる分だけ支払いが先に発生する業種なのです。資金的な準備を万全に整えておかなければ健全な企業活動ができません。加えて、売掛債権が入金になるまでに、手元の資金がショートしてしまえば次の仕事の受注もできません。せっかく受注しても必要な仕入れ等が行えないためです。つまり、手元に十分な資金がない企業は継続的に企業運営していくこと自体が不可能です。つまりは、上記の1〜9までの行程で、入金が全くなくても企業活動を続けられる状態が必要なのです。
銀行から借り入れる方法
それでは、資金繰りが苦しいときに銀行などで資金を借りる際の段取りも確認しておきましょう。2通りの方法があります。
1.短期運転資金を銀行に貸し付けてもらう
まず、考えられるのは基本的な資金調達方法である短期運転資金の貸付。例として売り上げが入金されるまでに2ヶ月の期間を要する場合、2ヶ月後が期日となる手形貸付で資金調達を進めます。売り上げが入金されたタイミングで手形貸付を返済すれば、非常にスムーズに運転資金の借り入れを支払うことができます。
これは、製造業の資金調達で最もオーソドックスと言える手段であり、特定の受注に必要な分の運転資金を借り入れていく形の、短期運転資金の活用になります。
2.銀行にて当座貸越枠を作成
次に挙げられるのが銀行に当座貸越枠を作成しておく方法です。当座貸越枠は、「いくらまでなら随時お金が借りられる」という上限枠のこと。この枠をあらかじめ設定しておく際には銀行の審査が必要になりますが、一度枠が設定されてしまえば、その範囲内であれば追加の審査なしで、必要なタイミングですぐに資金が調達できるようになります。仕事受注のタイミングで当座貸越枠から、運転資金として必要な額を借り入れます。製品の代金が入金されてから、当座貸越を返済します。売り上げ金をもって、運転資金を支払うというサイクルが可能になります。
通常の手形貸付は、申し込みから融資まで2週間程度かかることもありますが、当座貸越であれば最短即日での調達が可能。緊急で大口の受注をした場合なども、非常に有効な手段となります。もちろん事前の審査は厳しいですが、個々の案件ごとに審査を受け、また資金繰りを圧迫することを考えると、あらかじめ当座貸越枠を作成しておくことは損はないと言えるでしょう。
金融機関からの借入が難しい場合は?
現実問題としては、銀行からの貸し付けが難しいという側面もあります。
- 運転資金は長期資金になることが多い
- 当座貸越枠の審査が厳しく通過できない
この2つがネックとなり、銀行からの借入ができず、その他の手段を考えないといけない場合はどうすればいいのでしょうか?
1.ABL(Asset Based Lending)
ABLは、売掛債権や棚卸資産などの流動資産を担保にして銀行からお金を借りる方法。製造業で一定の在庫を有している場合や、売掛債権が常に存在しているというケースでは、その流動資産の評価額に応じて、短期資金の借入や当座貸越枠を作成できる可能性があります。担保となる資産の評価方法や融資可能額の目安は金融機関によって異なるため、興味がある場合は複数の金融機関に相談してみることをおすすめします。
当座貸越枠の審査は厳しい反面、ABLであれば、それほど業績が良くない場合でも担保を提供することにより資金調達ができる可能性が出てきます。「それでも短期運転資金や当座貸越枠を作成したい」という企業にとってはまず検討しておきたい方法です。
2.ビジネスローン
続いて考えられるのは、銀行ではないノンバンク系の事業者が提供する「ビジネスローン」を利用する方法です。個人向けの消費者金融と同じように、スピード審査・即日融資をうたう商品が多く、急な資金調達にも対応しやすいのが特徴です。
しかし、留意したい点もあります。ノンバンクからの借り入れは迅速な対応が魅力ですが、金利が非常に高く、返済負担が重くなりがちです。また、繰り返し借り入れと返済が可能となるため、元金が減るまで相当な時間を要し、完済できなくなるというリスクも孕んでいます。あくまで銀行融資が下りるまでのつなぎ資金や、短期間で返済の見込みが立っている場合の緊急避難的な手段と位置づけ、常用的に頼ることは避けたい資金調達方法です。
3.ファクタリング
ファクタリングは、保有する売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらう方法。入金期日よりも前に現金化できることを利用した利金調達の手段。融資を受けるのとは異なり、売掛金の売買取引となります。
つまり、利用者の経営状態や財務状況はそれほど重視されないため審査も通りやすいのです。審査で重要視されるポイントは取引先の信頼度が大きいところです。つまり、大企業の売掛金を保有しているのならば、財務状況が厳しい場合でも利用できる可能性があります。しかしながら、手数料が高くなっている点や、業者によって条件面が異なりますので慎重な検討が必要です。
ファクタリングには、利用者とファクタリング会社の2社間で契約する「2社間ファクタリング」と、売掛先の了承も得たうえで契約する「3社間ファクタリング」があります。2社間ファクタリングは売掛先に知られずに資金化できる反面、ファクタリング会社にとってはリスクが高くなる分、手数料も高めに設定される傾向があります。3社間ファクタリングは売掛先の協力が必要になりますが、手数料は比較的抑えられることが多いです。なお、金融庁も注意喚起しているとおり、ファクタリングを装いながら実質的に高金利の貸付を行う悪質な業者も存在するため、契約内容や手数料の水準をよく確認し、必要であれば金融庁や弁護士に相談することも検討しましょう。
4.セール・アンド・リースバック
保有している機械・設備をリース会社や買取業者に売却し、売却代金を受け取ったうえで、その同じ機械を今度はリース契約で借り受けて使い続けるという方法もあります。「セール・アンド・リースバック」と呼ばれる手法で、機械そのものは手元に残したまま、資産を現金化できるのが特徴です。不動産でも使われる手法ですが、工作機械や生産設備でも同様の仕組みを利用できます。
実際に当社でも、「資金繰りが厳しいので、使っている機械を買い取ったうえで、そのままリースという形で貸してもらえないか」というご相談をいただいたことがあります。生産を止めるわけにはいかないものの、まとまった現金がすぐに必要という状況では、銀行融資の審査を待つよりも早く資金を用意できる可能性がある手段として、このような相談をいただくことがあります。
ただし、セール・アンド・リースバックは、売却によって得られる現金と引き換えに、その後は月々のリース料という形で継続的な支払いが発生する仕組みです。長期的に見れば、売却せずそのまま所有し続けるよりも総支払額が増える可能性もあるため、目先の資金繰りだけでなく、リース期間中の収支まで含めて検討することが大切です。機械の査定額や、リースバック後の条件は、設備の種類や稼働状況によって大きく変わってきますので、まずは買取業者に機械の価値を確認してみることをおすすめします。
日頃からの資金繰り管理も欠かせない
借入による資金調達と並んで、日頃から資金繰りの状況を「見える化」しておくことも、製造業の資金管理では欠かせません。代表的なのが「資金繰り表」です。資金繰り表は、入金・出金の予定を月単位や週単位で一覧にし、将来の手元資金残高を予測するための表です。損益計算書上は黒字でも、入金と出金のタイミングのズレによって手元資金がショートしてしまう「黒字倒産」を防ぐためにも、資金繰り表で先々の資金残高を把握しておくことが重要になります。
資金繰り表を作成していると、「来月、一時的に資金が不足しそうだ」といった兆候を事前に察知できるため、資金がショートしてから慌てて金融機関に駆け込むのではなく、余裕を持って融資の相談や支払いサイトの交渉に動くことができます。金融機関に融資を相談する際にも、資金繰り表を提示できると、資金使途や返済計画への理解を得やすくなるというメリットもあります。日本政策金融公庫や、各地の信用保証協会といった公的機関も、中小企業の資金繰り相談に応じているため、取引のある銀行だけでなく、こうした公的機関の窓口も選択肢に入れておくとよいでしょう。
終わりに
今回は、製造業の資金繰りについて、押さえておきたいポイントをまとめました。製造業では、手元に十分な運転資金を準備しておかなければ企業活動自体も難しく、資金繰りはすぐに切迫してしまうということがお分かりいただけたと思います。
短期資金での銀行からの借入が原則的ですが、審査が厳しい現状があることから、それ以外の方策も3つほど挙げました。担保や手数料などそれぞれにリスクもあることから、慎重に対処法を選択することが必要です。いずれにしても、資金の流れや、苦しい時の対処法の選択肢の可能性をしっかりと把握しておくことが大切です。日頃から資金繰り表で先を見通しておくこと、そして使わなくなった機械・設備を早めに現金化しておくことも、いざというときの資金繰りの余力につながります。半導体不足や原材料高騰、為替変動など、自社の努力だけではコントロールしきれない外部要因が増えている今だからこそ、手元資金に余裕を持たせておく備えの重要性は、以前にも増して大きくなっています。
資金繰りの具体的な対策については金属加工業の資金繰りと経営戦略でも紹介しています。新しい機械の導入を検討している場合は、リースと購入どちらが得かを比較することも、キャッシュフロー改善の一助になります。














