製造業になくてはならない工作機械。工作機械の国内メーカーと聞いて、イメージする会社がいくつかあるかと思いますが、それぞれどんな特色のある企業なのか、まとめていきたいと思います。第一回目は「ファナック」。キャリアサイトなどでも人気の会社のようですが一体どんな会社なのでしょうか?
世界での位置付け
山梨県忍野村に本社がある、重電・産業用電気機器メーカーであるファナック。ファナックの事業の三本柱はFA(工場における生産自動化)とロボット、ロボマシンです。全社員の約3分の1までを研究職が占めていることも大きな特徴と言えます。研究開発重視を重視する経営方針や体制で安定した企業発展を遂げてきました。
工作機械用CNC(コンピューター数値制御)では世界首位の実績を誇る、日本有数の工作機械メーカーです。産業用ロボットメーカーとしては世界4強の一つとして挙げられるメーカーであり、 文字通りグローバル企業と言えます。
ファナック概要
ファナックは、1955年のNC開発のスタート以来、工場の自動化を追究し続けてきたメーカーです。基本技術であるNCとサーボ、レーザからなるFA事業を一つ目の軸として、基本技術を応用したロボット事業及びロボマシン事業も積極的に展開し実績を作っています。
現在は、IoT技術及びAI技術をFA・ロボット・ロボマシンの領域全体への積極的な応用に着手しており、顧客がより効率的に製品を利用できるような取り組みに力を入れています。また、ファナックでは顧客に対する保守サービスにも尽力しています。事業活動を通じて、製造の自動化と効率化を推進することで、国内はもちろん世界的に製造業の発展に貢献していると言えます。
ファナックの歴史
ファナックは、1956年に国内では民間初となるNC(数値制御装置)の開発に成功したメーカーです。それ以降、NC開発と発展の歴史がファナックの歴史そのものとなっています。
1959年には日本で最初の連続切削NCを完成。1960年台には、歴史的にも注目される直線切削用NCの一号機が完成するなど、年月を追うごとにNC開発の展開がめざましく、世界的なメーカーへと成長していきます。1969年には完全モジュール化NCを完成します。
1974年にはロボット開発も進み、自社への導入がかなうと共に、米国ゲティス社とのライセンス契約も結びます。これ以降各国に、現地企業との協働または単独で海外拠点が増えていく時期になります。海外との結びつきも強く、アメリカだけでなくヨーロッパ、東欧、アジアなどグローバルに発展していくこととなりました。また国内でも歴代経営者が受勲するなど、各方面より評価が高まりました。
平成の時代には、その世界的な地位が確立されてくると同時に、各海外拠点の整理統合などが進められます。2011年には本社に新ロボット工場を竣工。2015年にはロボット累計40万台の出荷実績を築き上げます。
令和に入り、2019年には新たにロボナノ工場を建設するなど、ますます軸となる領域での発展が見込まれるメーカーです。根底にあるのはやはり研究開発重視の企業姿勢。より優れた商品と、企業信頼を目指し開発が進められていくのではないでしょうか。
研究開発姿勢
ファナックでは、「高信頼性」という基本方針を守りながら、知能化/超精密化/高機能化を図った高品質の商品開発をモットーとしています。若手の研究者も多く、精力的に商品開発が行われているようです。
研究開発活動の舞台となる研究所について見てみましょう。研究開発組織が研究所ごとに体系的に分かれており、代表的なものは下記の通りです。
- ハードウェア研究開発本部
最先端のエレクトロニクス技術を駆使。高い加工性能と稼働率、使いやすさを備えた信頼性の高いCNCハードウェアの研究開発が行われます。
- ソフトウェア研究開発本部
知能化、IT化が求められる工作機械に対応する、高い加工性能と稼働率、使いやすさを備えたCNCソフトウェアの研究開発を続けています。
- サーボ研究開発本部
サーボモータなどの研究開発や、モータを高速・高精度に制御する検出器や制御ソフトの研究開発が行われます。
- レーザ研究開発本部
切断・溶接などの加工用炭酸ガスレーザ、ガルバノスキャナを研究開発しています。
- ロボット機構 研究開発本部
FA事業本部のCNCとサーボの基本技術を応用、高性能かつ高生産性を実現するロボット機構部の設計を行う部門。
- ロボットソフト研究開発本部
ロボット制御装置の基本ソフトや知能化ソフトとPCソフトの研究開発を行っています。ますます重要度が高まっているネットワーク機能に対応しながら、ロボットに視覚と力覚を与える商品まで開発しています。
- ロボドリル研究開発本部
工場のロボット化とIoT対応を実現すべく、高い加工性能や稼働率を備えた小型切削加工機の研究開発が行われています。
この他、次世代技術研究所や、アメリカ西海岸の先端技術研究所など、今後の長期的ビジョンを見据えた部門が設立され、それぞれに研究開発が進められています。
働き方改革
ファナックは、近年、長時間労働の是正策など働き方改革が積極的に行われている企業でもあります。時間外労働の上限時間削減や年次有給休暇の取得を推進することで、従業員の働き方改革が進められてきました。
その成果も顕著に見えており、年次有給休暇は初年度から22日付与、年次休暇取得率は2018年のデータで85%と高水準にあります。 それに加え、いち早く不妊休職制度の整備を進めている企業であり、育児短時間勤務制度においても、対象を小学6年生まで拡大するといった、積極的なワークライフバランスの実現をバックアップしています。病気の治療と仕事の両立支援にも注力している先進的な企業と言えるのではないでしょうか。
終わりに
今回は、国内有数の工作機械メーカーであるファナックについてまとめました。
ものづくりに欠かせない工作機械。そのメーカーという観点から歴史や動向を見ていくことで新しい視点や考察が出てくるかと思います。今回の記事もご参考や知見にしていただければ幸いです。