
※本記事は2026年9月17日に、最新の受注統計・市場データを反映して更新しました。
製造業になくてはならない工作機械。その工作機械の市場動向はどうなっているのでしょうか?まずは今後の世界市場について掘り下げます。
世界の市場動向
各種調査会社の推計によると、2026年時点の世界の工作機械市場規模はおおむね800億〜1,300億米ドルの範囲で見積もられており、調査会社によって前提条件や集計範囲が異なるため幅があります。今後の年平均成長率(CAGR)についても、調査によって3%台〜9%近くまで幅がありますが、多くの調査で「今後も緩やかな拡大が続く」という方向性は一致しています。
工作機械の市場を牽引しているのは、製造業全般の成長のほか、人だけではなくロボットと機械との相互作用の普及、投資の増加といった要素になります。地域別に見ると、依然として存在感が大きいのはアジア太平洋地域です。自動車や建設、製造、航空などの産業において需要が根強く、生産台数・消費額ともに世界最大級の市場を形成しています。北アメリカ地域でも、製造業の国内回帰(リショアリング)の動きとあわせて、自動化ラインへの投資が積極的に進められています。
欧州は、エネルギーコストの上昇や自動車産業のEVシフトへの対応に追われながらも、高付加価値・高精度な工作機械の分野では依然として強い競争力を維持しています。地域ごとに事情は異なりますが、いずれの地域でも「人手をかけずに、より精密に、より効率的に」という設備投資の方向性は共通しており、これが工作機械市場全体を下支えする構造になっています。中東やアフリカなど、これまで存在感の薄かった地域でも、資源関連プラントやインフラ整備に伴う設備投資が徐々に立ち上がりつつあり、将来的な新規需要地として注目され始めています。
工作機械は、様々な産業分野で幅広い用途に用いられることで市場の成長を加速させます。中国やインドなどを中心とする新興国の工業の発展や、政策が市場成長に貢献していっているのも事実です。手作業の効率化のための精密工具の需要急増により、世界の工作機械市場が成長加速するという側面もあります。また、新技術の積極的な開発も、市場の成長に大いに貢献する要因になります。
近年特に目立つのが、半導体製造装置向けやEV(電気自動車)関連部品向けの需要拡大です。半導体の生産能力増強のための工場新設・増設ラッシュは世界各地で続いており、精密な加工を要する工作機械への投資が旺盛です。あわせて、人手不足を背景とした自動化・省人化投資も世界的なトレンドとなっており、ロボットとの組み合わせを前提とした工作機械の需要が伸びています。データセンター向けの投資拡大も、関連する精密部品の需要を通じて工作機械市場を下支えする要因のひとつに挙げられます。
日本の市場動向
日本工作機械工業会(JMTBA)によれば、2024年(暦年)の工作機械受注総額は1兆4,851億円(前年比0.1%減)で、過去8番目の高水準でした。内訳を見ると、内需は4,415億円(前年比7.4%減)と伸び悩んだ一方、外需は1兆436億円(前年比3.4%増)と堅調で、外需比率は70.3%と暦年ベースで初めて7割を超えました。国内の設備投資が力強さを欠く一方、海外需要が受注全体を下支えする構図が続いています。
続く2025年の受注総額は前年比8%増の1兆6,043億円となり、歴代4番目の高水準を記録しました。内需は4,408億円(前年比0.2%減)とほぼ横ばいだった一方、外需は1兆1,634億円(前年比11.5%増)と過去最高を更新しています。半導体関連や自動化投資向けの需要が、外需をけん引したとみられています。
機種別に見ると、半導体製造装置向けの精密加工に使われるマシニングセンタや、EV用バッテリー・モーター部品の加工に対応した複合加工機への引き合いが目立ちます。従来の自動車向け(エンジン・ミッション関連)の受注が伸び悩む一方で、こうした成長分野向けの需要が全体を下支えする構図になっており、機種によって明暗が分かれているのが近年の特徴です。今後もこの「機種による明暗」の傾向はしばらく続くとみられ、どの分野に強みを持つ機械を保有しているかによって、売却時の評価も変わってくると考えられます。
数年前まで続いていた米中貿易摩擦やコロナ禍による受注急減の局面からは持ち直したものの、内需の伸び悩みが続いている点は変わらぬ課題です。国内の製造業では人手不足や設備の老朽化を背景に更新需要は根強いとみられる一方、投資判断は依然として慎重な企業が多く、外需依存の構造がより鮮明になっています。
あわせて注視したいのが、安全保障を理由とした輸出管理の強化です。半導体製造装置や高精度な工作機械は、近年ワッセナー・アレンジメントに基づく国際的な枠組みの見直しが進んでおり、日本でも輸出貿易管理令の改正が重ねられています。中国向け・ロシア向けをはじめとする一部の輸出には従来より厳格な手続きが求められるようになっており、外需の内訳や取引条件にも影響を及ぼし始めています。
日本製工作機械が評価される理由
外需が受注全体の7割を超える背景には、日本製工作機械そのものへの評価の高さがあります。精度の高さはもちろん、部品供給網や保守サービスの充実度、耐久性の高さから「一度導入すれば長く安心して使える」という信頼が、海外の製造現場で根強く支持されています。中古機械であっても、日本製というだけで一定の評価を得られる場面は少なくありません。長年にわたって蓄積されてきた「壊れにくい」「精度が落ちにくい」というブランドイメージは、一朝一夕には築けないものであり、これが日本メーカーの大きな強みになっています。
輸出先としては、東南アジアやインドといった、これから製造業が拡大していく新興国が引き続き重要な市場です。これらの地域では、最新鋭の機械よりも、価格と性能のバランスが取れた中古の日本製機械への需要が根強く、国内で役目を終えた機械が第二の人生を歩む舞台になっています。人件費の上昇に伴い、これらの国々でも自動化・機械化のニーズが年々高まっており、中古の日本製工作機械はその受け皿として重要な役割を果たし続けています。
工作機械市場の課題
概して、工作機械の市場は企業の設備投資に対するモチベーションにより左右される部分が多いです。つまり、景気の影響を非常に受けやすい領域であり、景気動向の先行指標とされることも多いのです。実際、工作機械受注統計は毎月速報値が公表され、経済ニュースなどで設備投資動向を示す先行指標として取り上げられることも珍しくありません。
例えば、一つの業界で設備投資を様子見が発生した場合、納入までに長期を要する工作機械産業へ波及的かつ拡散的に影響が出てくるわけです。長期的に見れば、国内市場の飛躍的な成長は見込めないと考えられているため、海外市場をどのように拡大していけるかが大きな課題と言えそうです。
国内需要の伸び悩みの背景には、少子高齢化による国内市場の縮小見通しや、後継者不在による廃業の増加もあります。設備投資をしたくても、将来の需要が見通せずに二の足を踏む中小製造業は少なくありません。一方で、老朽化した設備をそのまま使い続けることによる故障リスクや、若手人材が使いこなせないアナログな旧式機械の問題も表面化しており、「更新したいができない」というジレンマを抱える工場も増えています。
工作機械市場の懸念点
工作機械市場の成長にとって懸念となるのが、部品数の減少や海外各国の動向です。
【部品数の減少】
生産性の向上を目指し、また機械の精度が上がることで部品点数というのは減少することを余儀なくされます。部品の需要が減って行くことは、中小企業や町工場といった下請け業者にとって問題が起こるだけではなく、工作機械産業全体にとっても脅威となる可能性があります。
特にEVシフトはこの傾向を加速させる要因として注目されています。エンジン車と比較して、EVは部品点数が大幅に少ないとされ、エンジン関連部品を長年手掛けてきた中小の加工業者にとっては、受注減少に直結しかねない構造変化です。仕事量が減れば、当然ながら工作機械への新規投資も抑制され、業界全体の設備投資マインドを冷やす要因になります。もっとも、EVシフトの速度は国・地域によって差があり、当初の予想より緩やかに進んでいる市場もあるため、影響の大きさは今後も注視が必要です。
【海外の動向】
海外に注目すれば、日本のライバルの筆頭として、まずドイツが挙げられるのではないでしょうか。無人製造管理やIoT連携で目覚ましい成長を遂げると共に、製造業におけるオートメーション化、データ化、コンピュータ化の技術的コンセプトである「インダストリー4.0」を国家戦略プロジェクトとして政府と産業界が協働し、製造業の担う未来像の実現に取り組んでいます。ただし近年はエネルギー価格の高騰や自動車産業(特にエンジン関連)の需要縮小により、ドイツ国内の工作機械メーカーも生産体制の見直しを迫られており、必ずしも順風満帆というわけではありません。
宇宙・航空機分野での競争力が非常に高いアメリカ、繊維など特定の産業に特化した工作機械に独自のノウハウをもつイタリアも常に注視すべき存在です。さらに、これまで高度な精密さが求められる領域では日本に遅れをとっていた中国に関しても、大きな変化が見られます。製造業の高度化を掲げた国策「中国製造2025」は、目標年である2025年を迎え、新エネルギー車や高速鉄道、5G通信、太陽光パネルなど多くの分野で目標の大部分を達成したと報じられています。米国による輸出規制がかえって自国での技術開発を後押しした側面もあるとみられています。一方で、半導体の自給率は目標の70%に対して実際には20%台にとどまるなど、すべての分野で計画どおりに進んだわけではありません。工作機械分野についても、生産額ベースで中国製が存在感を増しており、量産機種を中心に日本メーカーにとって無視できない競合になっています。
これらの国はライバルとして注視する同時に、製造で積極的に成長を目指している国や地域を、我が国にとって大切な市場拡大機会と捉えることもできるのです。
生成AI・IoTがもたらす新たな競争軸
近年の工作機械業界では、生成AIやIoTを活用した「賢い工作機械」への進化も競争軸のひとつになっています。加工中の振動や温度変化をセンサーで検知し、AIが最適な切削条件をリアルタイムで調整する機能や、稼働データをクラウドに蓄積して故障の予兆を検知する保守サービスなど、単なるハードウェアの性能競争から、ソフトウェア・データ活用を含めた総合力の競争へとシフトしつつあります。
こうした高機能な新鋭機が普及する一方で、中小製造業の現場では、従来型の汎用機械が今なお主力として活躍しているのも実情です。すべての工場が最新鋭のスマート機械に入れ替えられるわけではなく、機械の性質や予算に応じて、新旧の機械が併存する状態がしばらく続くと考えられます。むしろ、シンプルな構造で長寿命な汎用機械だからこそ、中古市場での評価が安定しているという側面もあります。
市場動向が中古工作機械の売買に与える影響
ここまで見てきた市場動向は、中古工作機械の売買にも直接影響します。外需が受注全体を牽引している状況は、国内で使われなくなった機械が海外で新たな需要を見つけやすい環境が続いていることを意味します。実際、当社にご相談いただく機械の中にも、国内では買い手が見つかりにくくても、海外向けであれば良い条件で買取できるケースが少なくありません。
また、EVシフトによる部品点数の減少は、裏を返せば「エンジン・ミッション関連の加工を担ってきた機械」が余剰になりやすいことも意味します。今はまだ稼働していても、数年後に仕事量が減ってから売却を検討したのでは、需要が縮小したタイミングと重なってしまうかもしれません。業界構造の変化を早めに察知し、余裕を持って売却のタイミングを検討することも、経営判断の一つとして重要になってきています。
一方で、国内の設備投資が伸び悩んでいるということは、老朽化した機械を使い続けている工場がまだ多く存在するとも言えます。人手不足や後継者問題で「入れ替えたいけれど踏み切れない」工場にとって、まずは保有機械の現在価値を把握し、買い替え・処分の判断材料にすることが重要になってきます。市場が拡大局面にあるうちに査定を受けておくことで、想定より良い条件で機械を手放せる可能性もあります。
さらに、廃業や事業承継のタイミングで工場を畳む場合にも、市場動向は無関係ではありません。景気が良く外需が旺盛な時期のほうが、保有機械をまとめて売却する際に高値がつきやすい傾向があります。逆に、世界的な景気後退局面と重なってしまうと、同じ機械でも査定額が下がってしまうことがあります。事業承継や廃業のスケジュールをある程度自分でコントロールできる場合は、市場環境も踏まえてタイミングを検討する価値があるでしょう。
よくある質問
Q. 工作機械の市場動向は中古機械の査定額にどう影響しますか?
市場全体の受注が好調で、特に海外需要が強い局面では、中古機械の需要も連動して高まりやすく、査定額にプラスに働く傾向があります。逆に世界的な景気後退局面では、中古機械の需要も落ち込みやすくなります。市場動向は、売却のタイミングを判断する材料のひとつとして参考にしてみてください。
Q. 円安・円高は中古機械の輸出にどう影響しますか?
円安局面では、海外バイヤーから見て日本製の中古機械が割安になるため、輸出需要が高まりやすくなります。逆に急激な円高局面では、価格競争力が弱まり、海外バイヤーの購買意欲が下がることもあります。為替の動向も、売却時期を検討するうえで無視できない要素です。
Q. どのタイミングで機械を売却するのが有利ですか?
一般的には、稼働状態が良く、外需(海外需要)が堅調な時期に売却したほうが、良い条件を引き出しやすい傾向があります。ただし機種や年式によって需要のタイミングは異なるため、「そろそろ入れ替えを考えている」という段階で一度査定を受け、市場の反応を確認しておくことをおすすめします。
Q. 半導体関連の需要が減速したら、中古機械市場にも影響しますか?
半導体業界は好不況の波(シリコンサイクル)が大きい業界として知られており、関連する製造装置・工作機械への投資も、この波に連動して増減する傾向があります。半導体関連投資が減速する局面では、その分野向けの精密機械の需要も一時的に落ち込む可能性があります。ただし工作機械市場全体は、自動車・航空・一般機械など幅広い分野の需要で構成されているため、一分野の減速がただちに市場全体に及ぶわけではありません。複数分野に需要が分散していることが、工作機械市場全体としての底堅さにつながっています。
Q. 個人や小規模工場でも市場動向を意識する必要がありますか?
大企業ほど市場全体への影響力はなくても、自社が保有する機械を「いつ、どこに売るか」を考えるうえでは、規模の大小にかかわらず市場動向を知っておいて損はありません。特に海外への売却を検討する場合、円相場や現地の景気動向によって条件が大きく変わることがあるため、査定を依頼する業者から最新の市場感を教えてもらうのも一つの方法です。日頃から数字を細かく追いかける必要はありませんが、「今は売り時なのか、それとも待ったほうがよいのか」を相談できる業者とのつながりを持っておくことが、結果的に一番の情報収集になります。
終わりに
今回は、産業およびモノづくりを支えてきた工作機械について国内、海外の市場動向をまとめました。特に海外の状況については、各国の動向を踏まえながらつねに高度な技術開発を進めていくことが日本にとって必要であるとわかりました。
ものづくりに欠かせない工作機械。さまざまな業種で、実に多くの種類がありますが、俯瞰的にその市場動向を見ていくことも重要と言えるのではないでしょうか。
市場全体の数字は大きく捉えにくいものですが、突き詰めれば一台一台の機械の入れ替え・更新の積み重ねが、こうした受注統計として現れています。自社の工場にある機械が、今の市場環境の中でどれくらいの価値を持つのか、気になった際はいつでもお気軽にご相談ください。当社では機械の種類・年式・状態を問わず、無料で査定を承っています。
統計データは毎年更新されていくものなので、本記事の内容も定期的に見直していく予定です。「今の市場感」を知りたい場合は、統計を追いかけるだけでなく、実際に査定の現場に立っている業者に直接聞いてみるのも一つの近道です。
最新の受注統計の活用については経営に「工作機械統計」と「機械受注統計」が役立つ理由、2026年の市場動向は中古機械市場の動向2026で解説しています。














