オークマってどんな会社?

執筆者 | 9月 6, 2022 | ブログ

ロケット

ロケットも飛行機も自動車もオークマが存在しなかったら、今ほど高性能ではなかっただろうし、今ほど安全ではなかったかもしれない--。このように聞いて「確かにそのとおりだ」と思った人は、機械加工の仕事に長年携わっている人ではないでしょうか。

一般の人は「三菱重工やトヨタは知っているけど、オークマという会社は知らない」と答えるはずです。工作機械に「OKUMA」のマークが貼ってあったら、それは信頼の証(あかし)といっても過言ではありません。なぜなら日本が世界に誇る工作機械メーカー、オークマ株式会社(本社・愛知県大口町)のものだからです。

この記事では、「オークマっていう社名を初めて聞いた」という人と、「オークマの工作機械を毎日使っているが、会社のことはよく知らない」という人に、この会社がどのようなものをつくっているのか紹介します。

オークマの製品

オークマの主力製品は次のとおり。

  • 超複合加工機
  • 複合加工機
  • 5軸制御マシニングセンタ
  • マシニングセンタ
  • 門形マシニングセンタ
  • 旋盤
  • 研削盤
  • IT/CNC
  • 次世代ロボットシステム

いずれも金属の材料(ワークといいます)に刃を当てて削ったり磨いたりして部品をつくる機械です。オークマの工作機械の実力を紹介します。

オークマの5面加工門形マシニングセンタのすごさとは

マシニングセンタは切削加工を行う機械であり、そのうち門形マシニングセンタは巨大なワーク(加工する対象物)を効率よく加工することができます。切削する刃を回転させる主軸を支える構造が門の形になっていることからこの名称になりました。門形マシニングセンタで加工する巨大ワークは自動車や航空機の部品や大型金型になります。いずれも大きいのに極小部品並みの精度が求められ、なおかつ複雑な形状をしていて削りづらい、という特徴があります。そして5面加工門形マシニングセンタは、そのような、削るのが難しいワークの5面を一気に切削していきます。

オークマの5面加工門形マシニングセンタは、1回のセッティングで多種多様な加工ができるためリードタイム(所要時間)を短縮できます。また長時間の連続運転に耐えられるよう、熱や振動への対策も施されています。オークマは1964年に門形マシニングセンタの1号機をつくると、10年後の1974年には5面加工門形マシニングセンタを開発しました。機械工作の世界では「オークマの門形」と呼ばれることがあるほどです。

自動車部品用の大型金型をつくっているある金型メーカーは「剛性、加工精度、操作性の観点からオークマの5面加工門形マシニングセンタを選んだ」と話しています。この金型メーカーは、オークマの5面加工門形マシニングセンタを導入してから加工後の手作業による磨き工程が20%減り、調整作業の工数やマシンを停止する時間を大幅に削減できたといいます。

キーワードは熱、高速、精度、使いやすさ

オークマの工作機械が金属加工のプロから選ばれているのは、熱、高速、精度、使いやすさの4つの課題をクリアしているからでしょう。巨大ワークの加工では、広範囲を長時間にわたって切削することになり膨大な熱が発生してしまいます。熱は金属の形状や特性を変えてしまうことがあり、精度が出しづらくなります。

オークマはこの課題を解決すべく熱変位制御技術を独自に開発。作業箇所の温度が変化しても高精度を維持できるように、工作機械を変形させるようにしました。熱変位制御技術は「温度変化を制御する」のではなく「温度変化を受け入れる」という逆転の発想で生まれました。そしてオークマは工作機械の機械部分に加えて電気部分も自社開発しているので、工作機械のポテンシャルを高めることができます。オークマはこれを「機・電一体」思想と呼んでいます。

高速運転と高精度は、普通は片方を高めると他方が犠牲になるものですが、オークマは機・電一体でこの2つを同時に実現しました。機械部分を制御する電気部分も自社でつくるので、機械部分をより正確に動かせることができるのです。また、ユーザー・フレンドリーな操作パネルをつくることで、誰でも使いやすい機械にしました。

日本で世界でどれほど信頼されているか

オークマの工作機械を使っているメーカーは、航空機、船舶、自動車、風力発電装置、太陽光発電装置、半導体、カメラ、スマホなどの部品をつくっています。 日本のみならず世界のメーカーがオークマの工作機械を必要としています。

日本43%、アメリカ26%、欧州15%、アジア16%

オークマの工作機械の地域別シェアは次のとおり。

■工作機械の地域別シェア(2017年、売上高ベース)

  • 日本:43%
  • アメリカ:26%
  • 欧州:15%
  • アジア:16%

オークマの海外拠点はこのようになっています。

■オークマの海外拠点(多い順)

  • 中国:9カ所
  • オーストラリア:5カ所
  • アメリカ:4カ所
  • ドイツ:2カ所
  • メキシコ:1カ所
  • ブラジル:1カ所
  • オーストリア:1カ所
  • フランス:1カ所
  • ロシア:1カ所
  • 韓国:1カ所
  • 台湾:1カ所
  • タイ:1カ所
  • シンガポール:1カ所
  • ベトナム:1カ所
  • インドネシア:1カ所
  • インド:1カ所
  • ニュージーランド:1カ所

オークマは自らを「世界最高のものづくりサービス企業」と称していますが世界レベルであることは間違いないようです。

オークマとは4,000人で2,000億円を売り上げる会社

会社概要は以下のとおり。

  • 本社:愛知県丹羽郡大口町下小口五丁目25番地の1
  • 従業員:単体2,310人、連結3,953人(2022年3月)
  • 資本金:180億円
  • 東証プライム(旧東証一部)上場
  • 会社設立:1918年(大正7年)

オークマの会社設立は大正時代ですが、創業は1898年(明治31年)までさかのぼります。創業者は大隈栄一といい、最初の社名は大隈麺機商会。その名のとおり、オークマの最初の機械は製麺機でした。その後、工作機械開発に着手し1937年には日本国内の工作機械メーカーのなかで生産額1位になりました。

海外に根を下ろし、海外でも稼ぐ

2022年3月期(2021年4月~2022年3月、連結)は、売上高1,728億円、経常利益156億円、当期純利益116億円でした。2019年3月期に売上高が2,117億円となり「2,000億円企業」になっています。つまりオークマは約4,000人で2,000億円を稼ぐ会社ということができます。2022年3月期の売上高1,728億円の地域別の内訳は以下のとおりです。

■地域別の売上高

売上高(百万円)割合
日本80,58647%
アメリカ46,84627%
欧州29,69317%
アジア15,6829%
172,807100%

日本で半分稼ぎ、残りの半分の半分をアメリカで稼ぎ、その残りを欧州とアジアで売り上げています。 連結従業員3,953人の地域別の内訳はこのようになっています

■地域別の従業員

従業員数(人)割合
日本2,67168%
アメリカ2286%
欧州3258%
アジア72918%
3,953100%

日本の従業員が約7割で、約2割がアジア、残りが欧米となっています。地域別の売上高をみても、地域別の従業員からいっても、オークマはしっかりと海外に根を下ろし、しっかりと海外で稼ぐことができる、真のグローバル企業であることがわかります。

将来像~自動工場へ工作機械をスマート化

工作機械で確固たる地位を獲得しているオークマですが、将来への投資にもぬかりはありません。オークマ自身がメーカーですが、その顧客もメーカー(製造業)になります。そしてどの工場も今、深刻な人手不足に陥っています。そのためメーカーは、人が少なくてもものづくりを続けることができる、工場の自動化に力を入れています。したがってオークマは、顧客のメーカーが人員を減らすことができる工作機械をつくらなければなりません。

そこでオークマは、工作機械のスマート化に力を入れています。オークマはスマート化された工作機械こそが、顧客であるメーカーのスマート工場の土台になると考えています。携帯電話が、ガラケーからスマートフォンへと革新的に進化したように、スマート工作機械と呼ばれるには、従来の工作機械から劇的に変化しなければなりません。そこでオークマは、機械、電気、情報、知識、創造の融合を図ることにしました。機械と電気の融合は、先ほど紹介した機・電一体としてすでに具現化されています。オークマはここに情報、知識、創造を加えていこうとしています。

スマート工作機械の第1号となったのが、2018年に開発した次世代ロボットシステム「ARMROID」です。これは工作機械ロボットを動かすのに、従来の工作機械の操作と同じレベルの操作で足りるという優れもの。工作機械を動かすことができる作業者であれば、すぐにARMROIDを動かすことができます。外見もARMROIDは工作機械そのもので、そのなかにロボットが入っていることは、みただけでは気がつかないでしょう。

しかしARMROIDが動き始めると、アーム(ロボットの腕)がワーク(部品になる素材)をつかんで主軸に取り付けたり、刃が出てきて切削したり、完成品を所定の場所に置いたり、機械のなかを洗浄したりします。人は操作パネルで指示を入力するだけでよく、そのあとはARMROIDの周りに誰もいなくても次々部品ができあがってきます。

まとめ~世界のメーカーを支えている

成長著しい中国の製造業は、最近は「安かろう悪かろう」から「少し高いがかなりよい」に変貌しつつあります。日本メーカーが中国メーカーにかなわない分野は確実に増えています。そのようななかにあって、工作機械の品質には日本に一日の長があります。そしてオークマは、世界に誇る日本の工作機械をリードしてきた会社といえます。

オークマの精工かつ高速な工作機械があるからこそ、世界のメーカーは優れた製品をつくることができています。