
※本記事は2024年3月9日に公開した内容を、2026年11月に一部見直して更新しています。
個人でも法人でも、「保険」は身近な存在だと思います。医療保険、生命保険、自動車保険に火災保険、学資保険、海外旅行保険まで。個人でも、改めて数えてみるとこんなに多くの保険に入っていたんだと実感する方も少なくないと思います。
さて、製造業にとって重要な保険といえば…
火災保険、それとも機械保険などを思い浮かべますか?例えば機械が故障したときに補償される「機械保険」があります。実際どのようなときに補償が受けられるのか、具体的なイメージはお持ちですか?本日は製造業の企業が検討すべき保険の種類や、必ずおさえておきたいポイントについてまとめていきたいと思います。当社が査定に伺った現場でも、火災で機械が損傷したにもかかわらず保険が下りず、スクラップとしての売却を相談されたケースがありました。詳しくは後述します。
機械保険はどうして必要?
機械設備を多数保有している製造業にとって外せないのが機械保険。定義としては、機械設備や装置が故障してしまった場合に補償が受け取れる内容の保険にあたります。しかし、故障と言ってもさまざまな原因があります。人的な操作ミスや、機械の衝突事故など、工場内で起きるトラブルは様々なものが想定されます。
工作機械は、一台ごと高額なものが大半ですから、故障は企業にとって考えたくない事案です。買い換えるとなると、購入当時の相場が適用されないことも多く、また専門性の高い領域のため、修理代もばかにならないことが多いでしょう。しかしながら、想定外のトラブルや事故で故障する可能性にしっかりと向き合い、準備しておくことは製造業に携わる上で必須です。
機械にはもちろん、保証というものがあります。保証期間内であれば家電などと同様に無償の修理や交換が可能です。しかし、決められた一定期間が経過すればメーカー保証はありませんよね。高額な機械になれば規模は数千万、数億円とコストが膨らみます。製造業を営む法人にとって機械保険は機械設備をたくさん使えば使うほど慎重に、そして確実に選択しなければいけない保険なのです。保険料は年間どれほどの負担になるのか。補償は十分なのか。企業経営、今後の事業展開等、視野に入れた上でベストな保険を選ぶことが重要です。
機械保険で支払われる保険金
保険会社から支払われる機械保険の保険金はどんなものがあるのでしょうか。代表的なものを見てみましょう。
- 損害保険金…機械を稼働可能な状態に戻すため、そのコストを補償。機械の修理費用が、損害保険金にあたる。
- 臨時費用保険金…機械の故障等に対応した際の宿泊費や交通費を補償。
- 残存物取片づけ費用保険金…機械が故障等によって使用できなくなってしまった場合、その機械の片付けや取り壊し等に要した費用について、これを補償。
臨時費用や残存物取片付け費用に関しては上限額が決まっていることが多いようです。このほかにも、損害防止費用保険金のような補償もあります。
機械ごとに個別で契約をする「個別機械契約」と、事業所内の機械設備を一括で契約する「機械包括契約」の2種類があり、保険会社によって用意が異なります。自分たちの要望にあったものなのか、しっかりと確認しておきましょう。
実際の補償事例も挙げておきます。
例1:点火ミスによるボイラーの爆発
点火ミスによりボイラーが爆発し、損害補償1,000万円の支払い
例2:モーターの焼き付きによる破損
モーターが焼き付いてしまい使用不能になり、損害補償500万円の支払い
例3:異物混入による破損
異物の混入や巻き込みによって機械が破損。損害補償700万円の支払い
これらのトラブルは起こらないのが一番ですが、機械保険に加入することによって、不足の事態での余分なコスト負荷を抑えていることが端的に示されている事例ばかりです。各保険会社のサイトやパンフレットでもどのようなケースで補償されたのか説明記載があったりと、事例を確認することができますので、「こんな場合はどうなのか」と疑問に思われた方は、ぜひ参照してみてください。
機械保険の加入率と、入っていない企業が多い理由
機械保険は、火災保険や自動車保険と比べると、中小の製造業ではまだ十分に浸透していないのが実情です。理由として多いのは、次のようなものです。
- 火災保険に入っていれば十分だと思っている:建物の火災保険と機械保険は別物であることを認識していない
- 古い機械には保険をかける意味がないと考えている:中古で入手した機械や、年式の古い機械は保険の対象外だと思い込んでいる
- 保険料負担を後回しにしている:目の前のコストを優先し、将来のリスクへの備えが後回しになっている
実際には、中古機械であっても機械保険の対象になりますし、建物の火災保険と機械保険は補償範囲が異なります。この認識のズレが、いざ事故が起きたときに「補償されるはずだったのに、されなかった」というトラブルにつながりやすいポイントです。特に、設立から年数が経ち、創業当時に加入した保険をそのまま継続している企業では、設備が入れ替わったり増えたりしているにもかかわらず、保険の対象機械リストが当時のまま更新されていない、というケースも見られます。
火災保険との違いは?
火災が起きた場合を想定しましょう。考えたくないことですが、もしも火災により機械が故障してしまったら、保証されるのは機械保険、それとも火災保険?一体どちらなのか。
このケースでは、基本的に火災保険から保険金が支払われます。実は、大半の機械保険は火災による機械の故障まで補償範囲に入っていないのです。火災保険に入っていれば、いわゆる「火事」にまで至らなかった場合でも、過電流によってショートやスパークが発生するような電気系統の事故や、「機械的事故」といわれるような故障について補償範囲がカバーされています。つまり、機械設備の故障を手厚く補償しうる保険だと考えられます。
しかし無条件に安心できる万能なものではありません。特約をつけなければ機械設備の補償が対象になっていない保険もありますし、機械設備がそもそも対象外という保険商品もあるからです。保険会社ごと、もしくは商品ごとの内容を細かく確認することが大事です。
もしも、既に入っている火災保険で機械設備までカバーされていないのであれば、ぜひ比較見直しを検討していきましょう。補償内容を見比べ、保険料を比較したり、実際にほかの保険への変更手続きをするのは骨の折れる仕事ですが、定期的に保険を見直すことは企業活動を続ける上でとても重要です。 また、変更により思わぬコストカットにつながったり、不足の事態に万全の備えができたりとメリットもあります。
機械保険の注意点
機械保険に入っていれば、機械の急な故障はもちろん、従業員のミスなどで機会が壊れた際にも保険金が支払われます。どんな場合でも補償されるのでしょうか?そこには落とし穴もあるので留意しておくべきです。
例えば故意の故障や、重大な過失がある場合には補償範囲外とされます。
機械を誤って操作し、壊してしまう可能性はありますよね。誤操作の内容が、あまりにも重大だと言う場合には、「重過失」と定義されています。つまり、故意に機械を故障させたと判断が下りるため、対象外となってしまうのです。大きなミスのせいで損害が発生した場合には、慎重な調査とともに、補償してもらえるかどうか検討されます。補償してもらえない可能性についても心にとめておきましょう。
さきほどの章でも示したように、火災による故障は機械保険ではカバーできません。製造業の工場では、火災が起こる可能性はすべて否定することができないので、火災保険によりしっかりと備えておくことが大事です。
また、腐食やサビといった、機械にはつきものの経年劣化による故障。こちらも補償されませんので注意が必要です。機械ごとに寿命の目安はあるものの、メンテナンスをしっかりと行い、できるだけ長く最大限のパフォーマンスを発揮させるとともに補償範囲外とならないような状態をキープしていきたいですね。
機械保険の保険料はどのように決まるのか
機械保険の保険料は、主に以下のような要素をもとに算定されます。
- 保険の対象となる機械の価値(保険価額):機械の再調達価額や現在の評価額を基準にする
- 機械の種類・使用年数:プレス機や溶解炉のように事故リスクが高い機種は保険料も高くなる傾向がある
- 過去の事故・保険金請求の履歴:事故歴が多い場合、保険料が上がることがある
- 契約形態(個別機械契約か機械包括契約か):対象機械の台数や契約の組み方によって総額が変わる
保険価額の設定は特に重要です。導入時の購入価格のまま何年も見直されていないケースが多く見られますが、実際に事故が起きた際の補償額は、契約時に設定した保険価額が基準になります。機械の時価が下がっている、あるいは逆に新品での再調達費用が当時より上がっているといったズレが生じている場合、いざというときに「思っていたより少ない補償しか受けられない」という結果になることもあります。数年おきに保険価額を見直すことをおすすめします。また、保険期間中に機械を増設・入れ替えた場合は、その都度対象機械リストに反映しておかないと、新しく導入した機械が保険の対象から漏れてしまうので注意が必要です。
加入前に確認しておきたいチェックポイント
機械保険への加入、あるいは既存の保険の見直しを検討する際は、以下の点を確認しておくと、いざというときの「想定外」を減らせます。
- 火災は補償対象か:機械保険の多くは火災を対象外としている。火災時の補償は火災保険側の特約で対応できているか確認する
- 補償額は現在の機械の価値に見合っているか:加入時の価値のまま更新されていないと、実際の被害額をカバーできないことがある
- 中古で導入した機械も対象になっているか:新規導入時に保険の対象機械リストへ追加し忘れているケースがある
- 経年劣化・重過失の扱いはどうなっているか:保険会社ごとに判断基準や調査プロセスが異なる
特に1つ目の「火災は補償対象か」は、建物の火災保険と機械保険の両方に加入していても、実際には機械部分の火災損害がどちらからも補償されない、という事態が起こり得るポイントです。建物用の火災保険に機械設備を含める特約をつけているか、機械保険側で火災を補償する特約をつけているか、どちらかが必ず整っているかを確認しておきましょう。
【査定現場の傾向】火災で機械が損傷したが保険が下りず、スクラップ売却を相談されたケース
当社が査定に伺ったある工場では、工場内で発生した小規模な火災により、主力の機械が熱で損傷してしまったことがありました。幸い人的な被害はなく、建物自体の損害も限定的でしたが、火元に近かった機械は、フレームの変形や配線の損傷により、修理では復旧が見込めない状態になっていました。
経営者の方は、当然この機械についても保険で補償されるはずだと考え、保険会社に連絡しました。しかし結果は、建物部分の損害に対する火災保険の保険金は支払われたものの、機械自体の損害については「補償対象外」という回答でした。理由を確認すると、建物の火災保険には機械設備を対象に含める特約が付いておらず、また機械保険そのものには加入していなかったことが分かりました。「火災保険に入っているから、工場の中のものも含めて大丈夫だろう」という思い込みが、結果的に機械の損害分を丸ごと自己負担にしてしまったのです。
修理費用の見積もりを取ったところ、損傷の程度からみて新しい機械を導入するのとほとんど変わらない金額になることが分かり、修理は断念。保険による補償も受けられないため、せめて金属資源としての価値だけでも回収したいということで、当社にスクラップとしての売却についてご相談をいただきました。火災による熱で変質した部分もありましたが、損傷が少ない部材については重量に応じた買取額をご提示し、わずかながらでも資金化のお手伝いができました。あわせて、同じ工場内にあった他の機械についても、同様の特約漏れがないかを保険会社に確認するようお伝えし、二次被害を防ぐきっかけにもなりました。
このケースで印象的だったのは、経営者の方が「まさか機械の分まで出ないとは思わなかった」と繰り返していたことです。火災保険と機械保険、それぞれの補償範囲の境界線は、普段意識する機会が少なく、いざ事故が起きたときに初めて気づくケースが少なくありません。本記事で紹介した「加入前に確認しておきたいチェックポイント」を、既に加入済みの保険についても一度見直してみることを強くおすすめします。保険証券を取り出して特約の欄まで目を通す、代理店に電話で確認する——その数十分の手間が、いざというときの数百万円規模の差につながることもあります。
よくある質問
Q. リース契約中の機械にも機械保険は必要ですか?
リース契約の内容によって異なります。リース会社が保険を付保している契約もありますが、利用者側での加入が求められる契約も少なくありません。契約書の保険に関する条項を確認し、不明な場合はリース会社に直接問い合わせることをおすすめします。重複して加入してしまうと保険料が無駄になるため、必ず現状を確認してから検討しましょう。
Q. 中古で購入した古い機械でも機械保険に加入できますか?
中古機械であっても、基本的に機械保険の対象になります。年式が古いことを理由に加入自体を断られることは少ないですが、保険価額の算定方法や保険料は、新品の機械とは異なる基準になることがあります。導入時に保険会社や代理店へ相談し、対象機械としてきちんと登録しておくことが重要です。
Q. 保険金が支払われるまでにどのくらい時間がかかりますか?
事故の原因や損害の規模によって異なりますが、原因調査や修理費用の見積もりが必要な場合、数週間から数ヶ月程度かかることもあります。事故が起きた際は、現場の状況を写真で記録し、できるだけ早く保険会社に連絡することで、調査がスムーズに進みやすくなります。
Q. 保険の補償対象外になってしまった機械は、どうすればいいですか?
修理が難しい、あるいは修理費用が見合わない場合は、廃棄する前に売却・買取の可能性を確認することをおすすめします。損傷の程度によっては、部品として、あるいは金属スクラップとして値段がつくことがあります。保険で全額をカバーできなかった場合でも、売却によって多少の資金を回収できるケースは少なくありません。
終わりに
今回は、製造業に必要な保険についてまとめました。工場で高額な機械設備を使用している場合、いざというときの補償について熟知しておきたいものです。故障とひと口に行っても補償される場合と範囲外の場合があります。
保険料を払って、せっかく万一に備えるのですから、劣化や腐食によって補償されなかったような事態を防ぐためにも、機械の寿命を伸ばすためにも、メンテナンスにコストをかけることは有効だと言えます。また、火災の際に頼れるのは火災保険ですが、機械に対する補償は商品によりまちまちです。火災保険に入っている法人様は、ぜひ特約も含めた細かな条件、補償範囲を確認いただきたいと思います。万が一、保険の対象外で機械を手放すことになった場合でも、状態によっては買取やスクラップとしての価値が残ることもありますので、諦める前にご相談いただければと思います。
工場の建物そのものの保険については工場の火災保険は入るべき?でも解説しています。保険に入らず自前でリスクに備える考え方としては工作機械の保守契約は必要か?も参考になります。














