
※本記事は2026年10月6日に、関連法規や機械の安全対策に関する記述を加筆し、更新しました。
今回のトピックは工場の安全対策についてです。日々工場を安心安全に稼働させていくために、取り入れられる様々な方法があります。その中でも安全対策は第一に優先されるべきですが、具体的に何を重点的に行えば良いのでしょうか。きちんとした安全対策ルールを設けておくことにより、予期せぬトラブルも未然に防止できたり、稼働効率がアップすることで業績の工場へつながることもあります。労働災害は一度発生してしまうと、被災した従業員やそのご家族はもちろん、工場の操業そのものにも大きな影響が及びます。だからこそ、日頃からの備えが欠かせません。当社が査定に伺った現場で実際に見た、法定点検の記録がしっかり残っていた機械の話も、記事の中でご紹介します。
安全対策とひと口に言っても、会社として仕組みを整えるべきことと、従業員一人ひとりが個々に意識して取り組むべきことの、両方があります。この記事では、それぞれ押さえておきたいポイントを確認していきたいと思います。
安全ルールの徹底
多数の従業員が業務に従事し、稼働している工場においては、共通のルールに従って、全員が留意しながら作業を進めていくことが大事です。ルールがない状態では個々のメンバーが自分の考えや価値観に基づいて行動してしまうことで思わぬ事故やトラブルが発生する可能性も否定できません。
それほどに現場全員の共通認識というものは重要であり、故意でなくても生産効率や、業績に関わる問題につながることもありますので安全対策に取り掛かる第一歩としてルールの制定を検討しましょう。ルールを実際に制定し、工場を稼働していった場合のメリットは主に下記のようなものがあります。
①トラブルを未然に防止することができる
ルールが設けられることで、様々なリスクを回避し、トラブルの発生を未然に防ぐことができると考えられます。もしも、不適切であった慣習が引き続き行われたとしても、改善ルールを提案し、より良いルールのもとで稼働が行われれば、メンバーが納得のいく環境で安全に業務を遂行していくことができるのです。
さらに、ルールを制定することは、全員がふだんから危機意識を持つことにもつながります。高い安全意識をもって仕事に取り組むことでより安全対策が徹底され、よい循環を生みます。ルールは一度つくって終わりではなく、新しい機械を導入したときや、ヒヤリハット・事故が発生したときには、その都度内容を見直していくことも欠かせません。実態に合わなくなったルールを放置していると、かえって「守られないルール」として形骸化してしまうリスクもあります。
②業務レベルを一定水準にすることができる
共通ルールのもとで業務が行われているということは、即ち、すべての従業員が同じ水準で業務を進められるようになるという利点もあります。例えば、何か新しく導入されるシステムや業務について説明するような場合でも、マニュアルに沿って説明が伝達されるため、理解も早く進み、全体の進行もスムーズに運べるはずです。
③業績の向上が期待できる
ルールがない工場では概して不満が出やすいという傾向があるようです。ルールが制定されていれば、全員が共通認識を持って業務に取り組むことができるので、モチベーションも高められやすく、それにより業績の向上へいい影響を与えることが多いようです。
設定されたルールにより工程が増えることもあります。それにより作業効率が一時的に落ちることもあるでしょう。しかし、大きな事故や、従業員の被る危険を避けるために作られた必要不可欠なものなので、しっかりと順守しなければなりません。どのような危険があるのか1人ひとりがしっかり把握し、安全のためのルールは全従業員で徹底して守る必要があります。
トラブルを未然に防ぐ意識を徹底する方法は?
工場内では様々な機械を使用しており、大きな重量のものはもちろん、化学物質が発生するものなど、少しのミスでも重大な事故につながる要因は数えきれません。発生しやすい事故としては、はさまれ巻き込まれ事故や、転倒転落、金属などの飛来物による事故など、製造業ならではの事例が多いです。操作を誤ったことによる切り傷などの負傷事故も多く発生しています。厚生労働省が公表している労働災害の統計でも、製造業は建設業と並んで、休業4日以上の死傷災害が多い業種として毎年上位に挙げられています。なかでも「はさまれ・巻き込まれ」は製造業の労働災害の中でも大きな割合を占める事故類型です。
安全対策を怠れば、大きな事故は避けられず、命の危険も隣り合わせです。製造業において安全対策は決して手抜きをしてはいけない領域なのです。何か危険なことがあれば従業員同士でホウレンソウ(報告、連絡、相談)を行い、対策を立てて危機意識を連携していくことも大変有効です。
「ホウレンソウ」の他には、「ヒヤリハット」も意識されるべきです。ヒヤリハットとは、工場などの作業場で事故には至らなかったものの「ヒヤリとする」「はっとする」ような局面のことを言います。米国のハーバート・ウィリアム・ハインリッヒの数千件の労働災害の調査によれば、「一件の重大事故につながるまでに、29件の軽い事故および、300件のヒヤリハットが起こっている」という法則を1931年に著書で発表しています。これは「ハインリッヒの法則」とも呼ばれ、現代でも労働災害を防ぐための考え方として活用されています。
この法則を元に考えれば、事故を防ぐために軽い事故やヒヤリハットもできるだけ防いでおかなければならないということになります。ヒヤリハットを記録していく作業もとても大切だと言えます。ヒヤリハットが発生した場合は、これを漏れなく記録し、関連メンバーに報告、全体にも共有します。改善が必要な場合は、管理者に相談し、具体的な対策を考案していきます。事故につながるような事例をすべて記録し、全員に共有されることが重大な事故の防止に必ずつながります。ホウレンソウとヒヤリハット、現場におけるこの二つの実施が製造業の安全の行方を左右しますのでしっかりと意識しておきましょう。
ヒヤリハットの報告を集めるうえで大切なのは、「報告したら注意される」「評価が下がる」といった空気をつくらないことです。ヒヤリハットは、本来であれば表に出にくい「失敗の芽」を、重大事故が起こる前に拾い上げるための仕組みです。報告してくれた従業員を責めるのではなく、むしろ気づいて報告してくれたことを評価する文化をつくることで、ヒヤリハットの報告数は自然と増えていきます。報告数が増えること自体は悪いことではなく、むしろ職場の危険に対する感度が高まっている証拠だと捉えることが大切です。
工場の安全対策は法律でも義務付けられている
工場の安全対策は、単なる社内ルールにとどまらず、労働安全衛生法によって事業者に一定の義務が課されています。例えば、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、安全管理者・衛生管理者の選任や、安全委員会・衛生委員会の設置が義務付けられています(業種や規模によって要件は異なります)。これらの組織を通じて、職場の危険箇所の洗い出しや、労働災害の原因調査、再発防止策の検討などを定期的に行うことが求められています。
また、プレス機や旋盤、フライス盤といった工作機械には、労働安全衛生規則で、動力伝導部分への覆いの設置や、非常停止装置の設置など、機械ごとに具体的な安全基準が定められているものもあります。中古機械を導入する際も、こうした安全基準を満たしているかどうかを確認しておくことが、法令順守の観点からも重要です。万が一、労働災害が発生した場合、事業者には労働基準監督署への報告義務もありますので、日頃からの点検・記録の習慣づけが欠かせません。
さらに、一部の機械(ボイラーやクレーン、一定規模以上のプレス機など)については、定期的な自主検査や、所轄の労働基準監督署への届け出が義務付けられているものもあります。工場の規模や保有設備によって適用される規制は変わってくるため、新しく機械を導入する際や、工場を増改築する際には、自社の設備がどの規制の対象になるのかを、あらかじめ確認しておくと安心です。
実際に、当社が千葉県匝瑳市で査定に伺った動力プレス(アイダエンジニアリング製、1984年製)でも、この特定自主検査の記録がきちんと保管されていたことがありました。機械本体には製造番号や製造年月が記された銘板のほか、急停止時間(両手操作式・光線式)などの安全性能値が明記されたプレートが取り付けられており、検査済みを示すシールも年ごとに貼り重ねられていました。あわせて、潤滑油やギヤオイルの交換、ベベルギヤーやジョイント部、スピンドルといった可動部分の点検記録も、チェック表の形で几帳面に残されていました。
製造から40年近く経過した機械でしたが、こうした法定点検と日常のメンテナンスが欠かさず行われてきたことが記録から見て取れ、査定の際にも安心材料になりました。古い機械だからといって安全性が劣るわけではなく、点検・整備の記録がしっかり残っているかどうかが、実際の安全性はもちろん、買取査定における評価にも直結します。日頃の自主検査やメンテナンスの記録は、捨てずに保管しておくことをおすすめします。
危険予知訓練とは
現場で実際に、危険に直面したときやその兆候を感じるためには、危険に対する感受性や集中力、問題解決能力を個々に身につけておくことが大事です。そのために有効な「KYT」と呼ばれる訓練があります。危険=Kiken、予知=Yochi、訓練=Training それぞれの頭文字を取った造語であり、危険に対する感受性や集中力、問題解決能力を高めるために行われます。
KYTの中には「基礎4ラウンド法」と呼ばれる訓練手法などがあり、事故が発生しそうな状況のイラストを見ながら行ったり、実際の現場を見ながら行ったりできます。4ラウンドの手順は下記のように行います。
- ラウンド1:潜在的な危険のあぶり出し
- ラウンド2:重要度の分類
- ラウンド3:重要度の高い項目に対して、対策方法の案出し
- ラウンド4:チーム共通のルールへと制定
①潜在的な危険のあぶり出し
訓練メンバー全員でイラストもしくは現場を見て、考えられる危険を挙げていきます。ポイントは、どんな意見も否定せず、思いつく限りの問題を洗い出すことです。挙げられた危険は、ホワイトボードなどに書き上げていき一覧にしておきます。 ※活発に意見を出し合えるよう、5名程度が適当です。新人からベテランまで、経験年数の異なるメンバーを混ぜて実施すると、ベテランが気づかない「新人ならではの違和感」や、新人が気づかない「ベテランだからこそわかる危険」の両方を拾い上げやすくなります。
②重要度の分類
ラウンド1で挙がった危険項目の中でも、重要だと考える項目に印をつけます。その中から、再び重要なものを絞り込み、◎をつけて「危険ポイント」に設定します。この段階で意見が割れることもありますが、無理に一つの答えに絞り込もうとせず、なぜその項目を重要だと感じたのか、理由をメンバー同士で共有することが大切です。
例えば、各々が重要だと思う項目をメモに書き、3名以上が重要とした項目を◎などとしても良いかもしれません。2名以上のものは○にする、最重要は◎と段階的に設定できればわかりやすいです。〇がない項目、◯がついた項目、◎がついた項目と、3段階に区分した後、特に重要と判断できる◎の「危険ポイント」を全員で復唱確認します。
③重要度の高い項目に対して、対策方法の案出し
ラウンド2で挙げられた「危険ポイント」を解決する対策法について、意見を出し合います。出た対策法も一覧にしましょう。
④チーム共通のルールへと制定
ラウンド3で挙がった対策法の中で、実際に実施する項目を話し合い、決定したらマークをつけて、「チーム共通ルール」へと制定します。共通ルールは、掲示板等全体に毎日見える場所に貼り出すと効果的です。全ラウンドの最後に、まとめとして「危険ポイント」と「チーム行動目標」を指差し、復唱確認を行います。この「指差し呼称」は、目で見て、声に出して、耳で聞くという3つの感覚を使うことで、確認の精度を高める効果があるとされており、KYTに限らず、始業前点検や機械操作の前後など、さまざまな場面で取り入れられています。
工場の5Sとは?
どんな職場であれ、安全対策は必要です。製造業では特に、危険と隣り合わせということもあり、工場内で働く際のいわゆる「5S」への注意を掲げている現場も多いと思います。改めてその内容も確認しておきましょう。
5Sとは、「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「しつけ」のそれぞれのローマ表記から頭文字をとったもの。これら「5S」に力を入れている現場では、職場環境を良い状態で維持することができます。ひいてはそれが、安全対策にもつながるため、重要視している製造業が多いのです。しつけとは、従業員が業務や設備を十分に理解し、注意しながら業務を進めることができるようにするための教育です。整理、整頓、清掃、清潔は、業務環境に直接的に影響し、効率や安全面にも直結しています。
しかしながら、これらの5Sは基本的であればあるほど、それが習慣化されなければ良い結果につながりにくく徹底することも難しくなります。不要なものは処分しスペースを確保して、必要なものをすぐに見つけやすい状態にしたり(整理)、全員がものを定位置に保管する(整頓)。働く環境や使用する設備機械をきれいにして良い状態にする(清掃)、またそれを維持する(清潔)。 これらはすべて連動していますので、全員が普段から心がけを怠らずにルールとして守ることで、安全対策と生産アップが目指せることになります。
機械そのものの安全対策も忘れずに
ルールづくりや訓練といったソフト面の対策に加えて、機械そのものに備わっている安全装置も、工場の安全対策では重要な要素です。非常停止ボタンがすぐ押せる位置にあるか、回転部分や可動部分にきちんと安全カバーが取り付けられているか、インターロック(扉やカバーが開いている間は機械が作動しない仕組み)が正常に機能しているかは、定期点検のたびに確認しておきたいポイントです。
とくに古い機械では、長年の使用で安全カバーが変形・破損していたり、非常停止装置の反応が鈍くなっていたりすることもあります。性能面では問題なく稼働していても、安全装置の状態までは見落とされがちです。機械を入れ替えるタイミングは、こうした安全面を見直す良い機会でもあります。老朽化した機械を新しい安全基準に対応したものに更新することは、事故防止だけでなく、従業員が安心して働ける環境づくりにも直結します。また、機械を買取に出す前に安全カバーや非常停止装置を無理に取り外してしまうと、かえって査定や搬出の際にトラブルになることもあるため、そのままの状態で一度相談してみることをおすすめします。
保護具(ヘルメット、安全靴、保護メガネ、防音保護具など)の着用ルールも、機械の種類や作業内容に応じて見直しておきましょう。「以前からこうしているから」という理由だけでルールを続けるのではなく、現場の機械や作業内容が変わったタイミングで、保護具の種類や着用基準も定期的に見直すことが大切です。例えば、研削や切削の工程が増えれば防じんマスクや保護メガネの必要性が高まりますし、プレス機や溶接機を扱う工程が増えれば、防音保護具や遮光保護具の見直しが必要になることもあります。保護具は「支給していれば終わり」ではなく、サイズや劣化状況も含めて、定期的に点検・交換することまでがセットだと考えておきましょう。
終わりに
今回の記事では、工場の安全対策について押さえておきたいポイントをまとめました。上記で挙げたハード面はもちろんのこと、近年の猛暑により熱中症対策や、従業員の体調管理なども安全対策の一環として取り組んでいる企業が増えています。工場内の暑さ指数(WBGT)をこまめに計測する、休憩時間や水分・塩分補給のルールを明確にする、空調服や冷却ベストを導入するといった対策は、以前にも増して重要性が高まっています。
従業員が安心して仕事ができるように、ソフト面、ハード面、両方向から工場の安全対策を徹底することが必要だと言えます。ルールを作り全員で守りながら仕事をすることで、未然にトラブルも防止できます。機械の入れ替えを検討されている場合は、安全面の見直しとあわせて、当社の機械買取もぜひご活用ください。
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