工場の電気代削減のポイント

執筆者 | 12月 11, 2022 | ブログ

工場 電気

今回のトピックは製造業の電気代削減についてです。工場を所有する製造業は、消費する電力も非常に大きく、電気代が高くつきやすい業種と言えます。もちろん、工場の規模によっても異なりますが、コスト管理の上で無視できない電気代については理解を深めておきたいですね。電気代を削減できるよう対策に取り組むかどうかで、月に数十万、数百万単位の増減が見込めるようです。そこで、この記事では電気代削減のために、おさえておきたいポイントをまとめていきます。

電気代削減は比較的取り組みやすいコスト対策

工場経営でのコスト削減について考えてみましょう。主にかかる経費は固定資産税もしくは賃料、人件費、材料費、光熱費といったものが挙げられると思います。まず、工場の固定資産税や賃料は支払う額が固定されていますので、削減の道はありません。また、材料費については仕入れ先により決定されるため、削減は難しいですよね。

人件費はどうでしょうか。削減するにはリストラや減給を伴うことになるため、企業としてさまざまな懸念点が浮かびます。人的資源が減ることは、かえって売上が下がることになりかねませんので前向きな方策とは言えないでしょう。そこで、光熱費、とくに電気代は、複数の手段で現状より抑えられる可能性があるため、コスト削減の方策として優先して考えられることが多いです。

工場の電気使用の内訳は?

資源エネルギー庁の資料を参照すると、一般的な工場における電気使用量は次のような内訳のようです。

  • 生産設備…83%
  • 空調…9%
  • 照明…8%


コスト削減のためには、一番電力使用の割合が高い生産設備を省電力化するのが近道です。しかし、実際には省エネ機器への一斉取り替えは莫大なコストも労力も必要で、現実的とは言えなさそうです。そこで、LED電球に交換することや、空調を効率化できるようコントロールするなど、地道な方法で、光熱費を抑えることが一般的といえます。それに加え、近年は電力の自由化によって電力料金自体を下げるという選択肢も生まれています。

契約する電力会社の見直しは、大きな労力をかけずに、確実に実現できるコスト削減策として一般的になりつつあります。IoT化や自家発電による電力の効率化なども、削減効果を生むことができる方法になります。可能性のある方策を一つひとつ検討していきたいですね。

工場の電気代削減の手順

それでは、ここからは具体的に電気代を削減する方法をまとめていきます。LED照明への置き換えといった手法は一旦傍に置いておき、電力使用量や電気料金自体を下げる方法を挙げていきます。

①電気使用料の見える化

まずは、現状の操業で使用している電気量の詳細を把握していきます。これは基本的なステップであり、節電の第一歩と言えると思います。「今月の稼働量からすると、恐らく電気代はこのくらいかかりそうだ」というような大雑把な認識ではなく、「いつ、どの設備で、どれくらいの電気量が使用されているか」をきちんと把握できるような体制を準備しましょう。電気の使用状況がすぐに確認できることが重要です。


電気使用量が見える化されることで、無駄な消費電力を発見し、効率よく改善していくことにつながります。特に、消費電力が大きい設備や、集中稼働する時間帯などが明確になれば、電力の使用状況を詳しく把握できます。さらにIoTを導入することで、節電効果もいち早く確認できます。

②電力会社の見直し

電力の自由化により新規の電力会社が業界に参入している現在。各社の状況や希望に合わせて電力会社を選べる時代になりました。工場の電気代を簡単かつ手間なく安くしたいと考える人にとっておすすめの方法です。契約電力が高圧/低圧に関わらず、新電力に切り替えることで電気代の削減が見込めるでしょう。

各社、個性あるプランが用意されているため、まずは詳細を確認していきましょう。上手く自社に合うプランが見つかれば電気料金の大幅な値下げも不可能ではなくなります。最初から1社に絞り込んでしまうのでなく、定期的に見直して、電力会社やプランを都度最適なものに変えていくことも可能です。数ある電力会社から選択する場合のポイントは、

  • 自社の工場における稼働内容に適しているプランかどうか
  • 工場経営の分野で強みを持っている電力会社かどうか
  • 契約期間や違約金の条件についても漏れなく確認

この3つを押さえておくと良いでしょう。

③ソーラー発電の導入

続いて注目したいのが太陽光発電です。工場社屋の屋根部分や、空きスペースにソーラーパネルを設置し太陽光発電を取り入れることも有効なコスト削減になります。概して電気代は夜間よりも日中が割高になるものです。そこで、電気料金が比較的かかってしまう日中の電力を太陽光発電に差し替えることにより電気代を削減していくことができるのです。

また、ソーラー発電では災害時の使用や環境負荷を軽減する方法としても大きなメリットがあることで、製造業にかかわらず重視されています。地震や豪雨、大雪などによる停電の際でも設備の稼働を守ることができます。また、火力発電の使用に頼らないためCO2削減にもつながります。ソーラー設備を設置するために初期コストも気になるところですが、太陽光発電では、自治体や国による補助金や税制面での優遇措置があります。再生エネルギー導入推進事業の条件面を確認し、積極的に導入すべき方策と言えそうです。

④蓄電池の活用

次に考えられる方法は、蓄電池の利用です。電気料金が抑えられる夜間に電気を貯めておき、昼間に使用する仕組みです。
従来の蓄電池は、災害時やアウトドアで用いられる5~10キロワットの小型バッテリーが一般的なものでした。しかし、2011年の東日本大震災がきっかけとなり、工場や店舗など大規模施設でも使用可能な大型バッテリーが積極的に開発され、各方面での導入も加速しています。

近年は大型工場での操業にも耐えられる2MWh容量の大型蓄電池も開発され、実際に運用されているようです。そして、蓄電池に関してもソーラー発電と同様、自治体や国による補助制度がありますのでおさえておきましょう。

⑤IoT化の促進

最後に、Iot化を進めることにより、夜の稼働時間を増やすという方法も考えられます。IoTの導入により、工場全体の稼働状況が見渡せるというメリットがあります。導入には初期コストががかかりますが、一旦進めてしまえば、生産設備や空調設備の電力を無駄なく配分することが可能に。大きな省エネ効果が見込めるため、全体としてはコスト減に貢献できるはずです。

IoT化により、現場に居合わせずして工場の状況把握が可能になります。導入企業の事例では、夜間の稼働を増やしたことで全体の電気料金をコストカットできたという企業もあります。自動化できる作業を電気料金の安い夜間に行うことで、省エネを成功させる例です。

工場の電気料金はどのように決まる?

製造業の工場などで使われている高圧電力の電気代の仕組みはどのようになっているのでしょうか。改めて確認しておきましょう。

①法人向け高圧電力は一般家庭と仕組みが違う?

結論から言うと、法人向けの高圧も低圧も、一般家庭も基本の構成に関しては同じです。月の電気代は、「基本料金(最低料金)+従量料金((電力量単価±燃料費調整単価+再生可能エネルギー発電促進賦課金単価)×使用電力量(kWh))− 割引総額」という構成になっています。

ただし、家庭向けの電気の場合は、契約アンペア数ごとに基本料金や最低料金が設定されていますが、高圧電力の場合は、「30分デマンド値」で決定される契約電力をもとに算出される仕組みです。契約電力では、500kW未満の場合は過去1年間の最大デマンド値(最大需要電力)のうち、一番大きかった数値、つまり最大需要電力が契約電力と設定されます。デマンド料金制度と呼ばれるもので、500kW以上の場合は電力会社と協議が行われ契約電力を決めることになります。

また、基本料金には力率割引(割増)があり、力率85%を基準に効率の良し悪しが基本料金に反映されることも覚えておきましょう。この【デマンド値】と【力率】が料金を下げるカギになります。

②基本料金や単価を下げる方法があるの?

高圧受電の場合には、電力会社がデマンド計付きの電子式電力計を取り付けて、電気料金の使用量を図っています。この30分ごとの平均電力量の記録を「30分デマンド値」といいます。その月の「30分デマンド値」が一番高いものがその月の【最大需要電力】となります。つまり、電気代を安くするポイントは1ヶ月の【最大需要電力】というわけ。

デマンド計は毎時0〜30分、30〜60分をひと区切りずつとして数値をカウントしています。その数値がデマンド値であり、基本料金の基準になるため、30分内での使いすぎがあると、たちまち高額な電気代につながってしまうのです。しかも過去1年間で最も高いデマンド値が基準とされて、契約電力や基本料金が決まってしまうことも留意すべきです。1度上がってしまうと、1年後まで下がることがありません。そのため、1度に大量の電気を消費することは賢明ではなく、30分間で負荷を分散するような電気の使い方がコスト削減への道です。

もう一点、力率についても押さえておきたいポイントがあります。力率は85%を超えると1%ごと基本料金が1%割引されます(最大15%割引)逆に85%を切ってしまうと、1%ごとに基本料金が割増になるのです。この仕組みは必ず知っておきたいものです。電力を有効に使えば使うほどコスト削減につながるため、変圧器を使って電力を制御することや、古いものは省エネ型の変圧器に交換するなどして、力率の85%超を目標にしましょう。

終わりに

今回は、工場の電気代削減について、押さえておきたいポイントをまとめました。工場運営にかかるコストの中で電気代はかなりのウエイトを占めているため、このコストを削減できれば省エネ対策に大きく貢献できます。電気料金を安く抑えるためには省エネ機器の導入だけでなく、有効な方法がいくつもあることがわかりました。また、工場の電気料金の算出方法を覚えることも大切なポイントですね。

まずは設備投資コストがかからないものから始めてみるのも手だと思います。せっかく省エネに取り組むのであれば効率的に進めたいものです。本記事も今後の知見や参考にしていただけたら幸いです。