機械の売却手続きはどうすればいいの?

執筆者 | 11月 28, 2022 | ブログ

機械 売却

今回のトピックは工作機械など、製造業で不要になった機械や設備の売却についてです。機械の売却となると、

  • 「計上する日付はどう設定するの?」
  • 「帳簿価額より高く売れたらその利益は何に計上すれば?」
  • 「逆に、帳簿価格に満たない場合は・・・?」

即答できない疑問も多いかと思います。売却や手続きをスムーズにかつ損なく進めるポイントをしっかりと認識しておきたいですよね!ポイントをまとめていきますのでぜひご参考ください。

機械を売却するときの必要処理は?

機械等を売却する際に、売却額が帳簿価額を超える場合には、超過分の金額を固定資産売却益として処理することが必要です。損益計算書の「特別利益」に計上することになります。

一方で、売却額が帳簿価額に満たないケースもあります。その場合は不足分の金額が固定資産売却損として処理されます。すなわち、損益計算書の「特別損失」に計上となります。売却のために直接的にコストがかかる場合があると思います。その費用は売却価額から控除され、固定資産売却損益を算出することができます。

機械売却損益の計上における注意点

①計上時期はいつに設定?

機械の売却損益については、基本的には売却した時点で計上すべきです。しかし、「売却した時点」とは明確にいつを指すのでしょうか?民法上では「売買契約締結の日」とする考え方もあるのですが、会計・税務の観点からは、該当する機械の「引渡しの日」に売却損益を計上するのが一般的です。単純なことですが、認識していないと経費計上での管理ミスにつながってしまうので留意しておきましょう。

②帳簿価額の算出

帳簿価額は、企業が算出したその資産における「未償却残額」のこと。(取得価額-減価償却累計額)で通常は算出されます。例外として、会計上の帳簿価額と税務上の帳簿価額に相違がある場合は減算調整の必要が出てきます。売却した資産について償却超過または評価損の否認がある場合は注意が必要になります。

※売却した資産に償却不足がある場合については、償却不足額は帳簿価額に含めて損金算入となり、売却により消滅するため、調整は不要です。

③売却した年度の減価償却は?

機械設備等を売却すると、期首から売却時までの減価償却費を計上し、その資産の帳簿価額を計算するのが会計処理の原則です。ただし、税務上においては売却時までの減価償却費を計上せず期首現在の帳簿価額により売却損益を計算しても構わないことになっています。こちらもぜひ覚えておきたいですね。

④一括償却資産の売却は?

20万円未満の取得価額の減価償却資産は、通常の方法でなく3年で均等償却することが可能です。3年で均等償却している資産は「一括償却資産」と呼ばれます。この一括償却資産を売却した場合は、全部/一部売却した一括償却資産の帳簿価額から算出した売却価額との差額を「売却損」や「売却益」に設定することはできません。売却価額は雑収入となり、そのまま償却していくことになりますので注意が必要です。

⑤税務調査対策のポイントは?

機械等を売却したときの税務調査については、売却損益の計上時期が適切かどうかという点に重きが置かれます。例として来期に計上すべき売却損が今期に繰上げ計上されていないか、今期計上すべき売却益を次期に繰延べ計上されていないかといった、計上時期の妥当性がポイントになります。このようなことから、売却資産の受領書や引取書には、引渡し日付が必ず明記され保管されている必要があります。

機械を売却でなく廃棄した場合は

一方、機械を売却せずに廃棄したときは手続きはどうなるのでしょうか?その場合は、帳簿価額から廃材等の見積額を差し引きして、固定資産除却損として特別損失に計上することになります。尚、この除却損の計上にあたっては留意点がいくつかありますので確認しておきましょう。

① 廃棄年度に減価償却費を計上

売却したときと同じく、帳簿価額は企業が計算する未償却残額となります。償却超過または評価損の否認がある場合には減算調整が必要です。期の初めから廃棄時までの減価償却費が計上されるのが原則となっていますが、減価償却しなくても問題ありません。

②一括償却資産の廃棄は?

売却した場合と同じく一括償却資産について3年均等償却の適用がある場合、資産を廃棄したとしても、除却損を計上することはできないので注意が必要です。資産の全部または一部を廃棄した場合であっても、3年で均等償却を続けていくことになります。

③スクラップの売却収入

帳簿価額から廃材等の見積額を差し引いた金額が固定資産除却損です。機械によっては貴金属などが含まれていることから、廃棄時にスクラップの売却収入が発生することもあります。スクラップ代の収入計上漏れがないかどうかは、しっかりと確認しておく必要があります。

例として、機械等を期末に除却したものの、スクラップの売却が翌期に持ち越された場合では、スクラップ売却収入の計上は翌期ではないので注意してください。スクラップの売却額を、廃棄した機械の帳簿価額から差し引いて除却損を計上することが必要です。

④廃棄の場合の税務調査対策は?

機械等を廃棄した場合に、税務調査では、「廃棄の事実」と「廃棄の時期」がポイントになります。廃棄について稟議書を作成しておくことは当然ですが、さらに、廃棄した機械等の画像があれば事実の証明に役立ちますのでぜひ覚えておきましょう。その際は、廃棄前の画像と廃棄後の画像を日付入りで撮っておきます。事実及び時期の証明が一度で兼ねられるため、大変有効です。

機械の解体を業者に託している場合などでは、廃棄の事実と時期が明記された見積書・請求書などを準備しておくと万全です。また、廃棄した資産が社外で処分されている場合には、運送業者の配送控などがあることで、税務調査上のトラブルが回避できることも多いです。ぜひ活用しましょう。

総合償却資産の売却

個々の資産ごとに減価償却計算および記帳が行なわれているため、個別償却資産において帳簿価額が問題になることはありません。しかしながら、「総合償却資産」の場合は話が別です。

【総合償却】…耐用年数が異なる異種資産や、耐用年数の等しい同種資産や性質・用途などが共通している複数の資産を一グループとし、各々のグループについて平均耐用年数を用いることで一括的に減価償却の計算や記帳を行なうもの。

「総合償却資産」では総合耐用年数を適用するのが前提なので、売却や廃棄した個々の資産の耐用年数ではなく、総合耐用年数により未償却残額を計算することになります。そして、売却した資産に特別償却、割増償却や増加償却の適用がある場合、これらの償却があったものとして未償却残額を算出することになります。しかし、2つの特例が認められているので確認しましょう。

 ①未償却残額除却法

総合償却資産の一部売却があった場合に、損益計算の基礎になる帳簿価額は、継続適用を前提に、個々の資産の個別耐用年数を基に計算される未償却残額によって決めることができます。特別償却等の適用があるならば、それらの償却があったものとして未償却残額を計算することになります。

②配賦簿価除却法

総合償却資産の償却費を、 “合理的基準に基づいて” 個々の資産に配賦しているケースでは、帳簿価額を基にて個々の資産の除却等による損益の算出が可能になります。「合理的基準に基づく配賦」に値するのは、例として、総合償却資産の償却費を総合耐用年数を基に計算される償却可能限度額に沿って個々の資産に配賦しているケースなどです。そして、償却額の配賦がなされていない場合でも、その事業年度において個々の資産に合理的基準に基づいて償却費を配賦することができれば、特例が適用されます。

少額減価償却資産の売却

個別償却資産については、個々の資産の耐用年数に応じ個別に償却が行なわれているので、売却があっても帳簿価額は企業により記帳されている帳簿価額とすればよく、税務調査上の問題になることもそれほどありません。しかしながら、個別償却資産の場合でも、資産の種類や構造、用途、耐用年数が同一であれば償却限度額を通算して計算が行われており、償却費を個々の資産に配賦していないケースなどでは、個々の資産の帳簿価額が明確にはなっていません。

そう言った場合は売却した資産について、法定耐用年数を基に計算する未償却残額を計算しなければなりません。少額の減価償却資産では、個々の資産の取得価額等が明らかでない場合や個別管理が困難な場合も多いかと思います。取得価額が明らかでない場合は、未償却残額を計算できないため、その除却等をした資産の帳簿価額を原則1円とする方法があります。個別管理が困難な少額資産は、償却計算と除却計算を一体とした簡便計算が認められています。これら2つの例外的方法を念頭に置いておきましょう。

終わりに

今回は、機械の売却について、手続きや留意ポイントをまとめました。売却した際の条件や資産の種類により、さまざまな処理が存在することがお分かりいただけたと思います。損益計算書上の記載や、税務調査対策のポイントなどの正しい理解に基づいて、必要な資料の保管やトラブルを回避したスムーズな手続きを進めていきたいですね。本記事も今後の知見や参考にしていただけたら幸いです。