「特定技能」の対象職種と変更点

執筆者 | 8月 25, 2023 | ブログ

外国人労働

今回は、前回に引き続き製造業の人手不足の課題について取り上げます。前回の記事では、その解消策としての外国人採用に関する昨今の状況をまとめるとともに、外国人採用による企業活動のメリットを挙げました。

今回は特に、就労可能な在留資格である「特定技能」についてまとめたいと思います。直近で「特定技能」の対象分野で変更が行われたことは記憶に新しいですが、何が変わって、どんなメリットがあるのかを整理していきます。目下、外国人採用を予定しておられない企業であっても、現況の理解を進めておくことが必要と考えられます。また、今後の日本の状況を考えると企業の発展において新たな選択肢として出てくる可能性もゼロではないと思います。ぜひご参考ください。

「特定技能」の対象業種は?

2019年春に新設された外国人の在留資格である「特定技能」。一定の技術を持つ外国人材を産業やサービスの現場で雇用できるようにしたものです。特定技能には12分野あり、分野によって従事できる職種が決められています。例えば、同じ特定技能でも別の在留資格の業務をすることはできません。特定技能の大きな特徴は、単純労働を含む幅広い業務が可能になった点です。また、在留期間の上限は通算5年と定められていますが、在留資格の更新制限を外せるルートもありますし、技能実習から特定技能への移行も可能になっています。

前回のおさらいになりますが、2022年末の出入国在留管理庁「入管最新特定技能在留外国人数の公表」の統計によると、「特定技能」での在留外国人数は約13万人。製造業分野では実に27,000人を超えています。
「特定技能」にはもともと14業種が定められていました。その後、2022年5月から製造3分野(素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野)が統合され、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」と呼ばれるカテゴリとなっています。さらに、2022年8月からは、これまで19区分に分かれていた製造業分野の業務区分を3区分に統合し、より現場の実態に沿った業務範囲に改編されています。

12分野の全貌は以下の通りです。

  1. 介護
  2. ビルクリーニング業
  3. 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野(2022年に統合)
  4. 建設業
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備業
  7. 航空業
  8. 宿泊業
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業 

以上となります。

特定技能「産業機械製造業」の業務内容

製造業に関わりの深いのは、言うまでもなく「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」となります。この中で今回は、「産業機械製造業」を取り上げます。産業機械製造とは、工場などで稼働する機械全般のことです。建設機械や農業機械、工業機械などが代表的ですが、「産業機械製造」とは、そうした機械を作る産業全般を指すものです。

特定技能「産業機械製造業」で可能な業務は、次の18 種類となっています。

鋳造/鍛造/ダイカスト/機械加工/金属プレス加工/鉄工/工場板金/めっき/仕上げ/機械検査/機械保全/電子機器組立て/電気機器組立て/プリント配線板製造/プラスチック成形/塗装/溶接/工業包装

「産業機械製造業分野」では、特定技能1号の外国人数が、2022年2月末現在で5,400人となっており、受入れ見込数の5,250人を超過したため、在留資格認定証明書交付の一時停止する状況となっています。ただし、特定技能1号への在留資格の変更や在留期間の更新については、要件を満たしていれば申請できる状況です。

見込み数を超えてきた背景には、最も多く外国人材を受け入れてきた国内産業が製造業であり、技能実習生も多く訪日しているため、技術実習から特定技能への切り替えも大変活発になっていたことがあるようです。現在の特定技能人材は、この切り替え人材が大半であると言えそうです。

特定技能「産業機械製造業」での外国人材採用

特定技能「産業機械製造業」で外国人材を採用するためには、事業者側が「日本標準産業分類」に該当していなければなりません。経済産業省の資料を抜粋したものが下記になります。

(経済産業省「製造業における特定技能外国人材の受け入れについて」)

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/pdf/20200731.pdf

幅広い領域の製造業を網羅しているのがお分かりいただけると思います。

特定技能1号と2号の違い

特定技能には「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があります。その人材が保持する技能レベルに応じて1号と2号に区分されています。技能や日本語の水準が設定されているほか、家族の帯同や受けられる支援についても違いがあります。さらに、従来は12分野のうち2号は「建築業」と「造船・舶用工業」の2分野のみに限られていました。2023年6月の閣議決定を経て、今後は介護分野を除く11分野も2号の対象へと範囲が拡大されます。秋からは特定技能2号の試験が順次スタートします。製造業も例外ではなく、この変更に関わる状況も把握しておきたいところです。

下記に、経済産業省の公式ページより抜粋した「特定技能1号」と「特定技能2号」の定義をあげます。

(参照:経済産業省)https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/index.html

【特定技能1号】 相当程度の知識又は経験を必要とする技能(※)を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

※相当期間の実務経験等を要する技能であって、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準のものをいう。

  • 在留資格:1年を超えない範囲内で法務大臣が個々の外国人について指定する期間ごとの更新、通算で上限5年まで
  • 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除)
  • 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験免除)
  • 家族の帯同:基本的に認めない
  • 支援:受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象

【特定技能2号】熟練した技能(※)を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

※長年の実務経験等により身につけた熟達した技能をいい、現行の専門的・技術的分野の在留資格を有する外国人と同等又はそれ以上の高い専門性・技能を要する 技能であって、例えば自らの判断により高度に専門的・技術的な業務を遂行できる、又は監督者として業務を統括しつつ、熟練した技能で業務を遂行できる水準のものをいう。

  • 在留資格:3年、1年または6カ月ごとの更新、上限無し
  • 技能水準:試験等で確認
  • 日本語能力水準:試験等での確認は原則として不要
  • 家族の帯同:要件を満たせば可能(配偶者、子)
  • 支援:受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外

上記、違いがお分かりいただけたと思います。大まかには2号は実務経験が豊かで熟練した技能レベルを認められた人材に対し資格が与えられるということになります。外国人労働者自身にとってもまずは「1号」での就業を視野に入れる形になっており、ごく限られた人や企業が「2号」のステップを考えるという状況が続いていたと思います。しかしながら、今回の方針変更で「2号」での就業も可能性が広がっていくことになります。

終わりに

厳しい状況が続く日本経済において、外国人材の採用はますます重要な鍵を握ってくるということがわかりました。特に、日本の製造業を支えるために不可欠であり、日本の社会インフラを整備する重要な役割を担う「産業機械製造」関連では人手不足解消の施策として大きな可能性をもっていると言えます。外国人雇用を考える上で外せないのが在留資格「特定技能」の知識です。方針転換があるなど、その運用については過渡期であるためしっかりと自分の関わる業種以外も含めて全体の流れを抑えておきたいですね。