工作機械の種類、利用方法についてなじみのある方も、歴史についてはあまり知らないことが多いような気がします。今回は製造業で多く用いられている工作機械の歴史について簡単に触れてみたいと思います。
18世紀の産業革命以前は、調理器具、荷馬車、船、家具などの製品の切断や成形は実はハンドツールを用いて行われておりました。工作機械での製造がスタートしたのは、蒸気機関の出現後になります。大量生産や部品交換のニーズが多くなり、部品を正確に大量生産できる工作機械は大活躍することになります。 とはいえ、現代と比較すると当時の工作機械の精度は劣っており、初期の蒸気機関車はいろいろ不具合もありました。
初期の蒸気エンジン開発から50年経ってようやく、機械加工に不可欠な機能を備えた工作機械が設計、開発されました。1775年にイギリスのジョンウィルキンソンは、エンジンシリンダーをボーリングするための精密機械を製造しました。また、1797年には同じくイギリス出身のヘンリー・モーズリーは、ねじ切りエンジン旋盤を設計製造しました。モーズリーが製造した旋盤の大きな特徴は、往復台を駆動するための親ねじでした。1800年までに、モーズリーは旋盤に28のチェンジギアを装備し、主軸速度に対する親ねじ速度の比率を制御することにより、さまざまなピッチのねじ山を切断することに成功しました。
上記のように工作機械はイギリスでの産業革命を皮切りにスタートしました。イギリスは輸出を禁止することで、工作機械開発の主導権を維持しようとします。しかしこの試みは失敗に終わります。結局、輸出禁止されているにもかかわらずイギリスの工作機械はヨーロッパ、アメリカに輸出され、工作機械は国外で開発されることとなったのです。
19世紀前半には、銃器を製造するためにアメリカでフライス盤が発明され、19世紀半ばには同じくアメリカでタレット旋盤が開発されました。そして19世紀後半、研削盤が産声を上げます。 これによってなんと以前は5時間かかっていたプロセスである自動車のクランクシャフトの研削を、研削盤を利用することで5分で完了できるようになったのです。
工作機械の導入により金属加工と金属成形技術は大きく進歩し、大量生産と工業化社会の基盤を作りました。 20世紀には電気化学および超音波加工などの新技術の導入も見られました。今日でも、工作機械の開発・生産は日進月歩で成長しております。