JMTBAの受注統計から読む、中古機械が「増える業種」「減る業種」

執筆者 | 10月 8, 2026 | 業界動向・市場ニュース

工作機械が並ぶ工場を背景に、受注統計のグラフを分析するデスク
機械 買取

中古工作機械がどのくらい市場に出てくるか、またどのくらい買い手がつくかは、実は新品の工作機械の受注動向と深く連動しています。日本工作機械工業会(JMTBA)が毎月公表している受注統計を見ると、どの業種が設備投資に積極的で、どの業種が投資を控えているのかが見えてきます。「最近、同業他社はどんな機械を入れているのだろう」「うちの業界は今後も設備投資が続くのだろうか」といった疑問は、実はこうした統計からある程度読み解くことができます。この記事では、JMTBAの統計から読み取れる「増えている業種」「減っている業種」を整理し、中古機械市場にどう影響してくるのかを考えていきます。当社が実際に経験している、輸出先の変化についても記事の後半でご紹介します。

工作機械の受注統計は中古機械市場の先行指標になる

JMTBAの受注統計は、あくまで「新品の工作機械がどれだけ受注されたか」を示すデータであり、中古機械の売買を直接集計したものではありません。しかし、新品の設備投資が活発な業種では、入れ替えによって手放される機械が増えたり、逆に新規参入する企業が中古機械で設備を揃えようとする動きが強まったりと、中古機械市場にも間接的に影響が及びます。反対に、新規の設備投資が長期にわたって控えられている業種では、既存の機械を使い続ける、あるいは事業を縮小して機械を手放す、という動きが相対的に増えてくる傾向があります。

つまり、JMTBAの統計を「どの業種が元気で、どの業種が苦しいか」を知るための先行指標として活用することで、中古機械の売り時・買い時を考えるヒントになるというわけです。

なお、JMTBAの統計は会員企業(工作機械メーカー各社)からの報告を集計したもので、毎月の速報値と、年間でまとめた確定値が公表されています。業種別の内訳は「需要業種別受注高」という統計で確認でき、自動車、一般機械、半導体・FPD製造装置、航空機、電気・精密機械、その他といった区分で、金額と前年同月比・前年比が示されます。製造業に携わる方であれば、JMTBAの公式サイトで誰でも閲覧できる情報ですので、業界動向を定点観測する習慣をつけておくと、設備投資や機械の処分タイミングを検討する際の材料になります。

2025年の受注は3年ぶりに1.6兆円を突破

JMTBAによると、2025年の工作機械受注総額は前年比8.0%増の1兆6,043億円となりました。1兆6,000億円を上回ったのは3年ぶりで、過去の実績と比べても歴代4番目の高水準です。外需(輸出)は3年ぶりに1兆1,000億円台を突破し、全体をけん引しました。アメリカの通商政策の影響が懸念される場面もありましたが、アジアやアメリカ向けの需要は実際には堅調に推移したようです。

一方、内需は4,409億円にとどまりました。業種別に見ると、一般機械が1,759億円で最大、自動車が871億円で続きます。全体としては、外需の強さに支えられた1年だったといえそうです。2026年については、前年比7.6%増の1兆7,000億円規模になるとの見通しも示されており、回復基調は続くとみられています。

一般機械が内需で最大の割合を占めている点は、見落とされがちですが重要なポイントです。一般機械は特定の業種に偏らず、工作機械そのものをつくるためのメーカーや、各種産業機械・部品メーカーなど幅広い業種を含む区分であるため、景気全体の体温計のような役割を果たします。一般機械の受注が堅調であるということは、特定の業種だけでなく、製造業全体として設備更新・新規投資の意欲が底堅いことを示していると考えられます。

増えている業種

①半導体・AIデータセンター関連

生成AIの普及にともなうデータセンターの建設ラッシュと、それを支える半導体製造装置への旺盛な投資が、関連部品を加工する工作機械の需要を押し上げています。2026年の工作機械需要をけん引する最大の柱として位置づけられており、半導体関連の設備投資は当面高水準が続くとみられます。半導体製造装置そのものに使われる部品は、ナノメートル単位の精度が求められるものも多く、超精密加工に対応できる高精度な工作機械への投資が活発になっているのが特徴です。こうした分野では、程度の良い中古の精密加工機であっても、相応の値段がつきやすい傾向にあります。

②航空・造船・輸送用機械

2025年の内需のなかで、とりわけ伸びが目立ったのが航空・造船・輸送用機械で、353億円と前年比+45.8%の大幅増となりました。航空機業界ではコロナ禍で落ち込んだ航空需要の回復にともなう増産投資、防衛・エネルギー分野でも関連投資が活発化しており、こうした好調業種からの需要は2026年以降も続くとみられています。造船業界でも、脱炭素対応の新型燃料船への更新需要や、国内外からの受注増を背景に、関連する金属加工・溶接設備への投資が広がっています。これらの業種はもともと工作機械の主要な需要先としては自動車や一般機械に比べて規模が小さかった分、投資が本格化すると前年比での伸び率が大きく出やすいという特徴もあります。

③自動車(2026年以降)

自動車については後述の通り2025年まで内需が伸び悩んでいましたが、パワートレイン(エンジン・ハイブリッド・EV)の方向性が固まりつつあることを受けて、2026年にはエンジン関連の設備投資がいよいよ動き出すとみられています。長く様子見が続いていた反動で、動き出すタイミングでは比較的まとまった投資になる可能性があります。世界的にもEVへの全面移行が当初の想定より緩やかなペースになっており、エンジンやハイブリッド向けの部品需要が見直されたことで、関連設備への投資にも火がつきつつあるという側面もあります。

減っている・伸び悩んでいる業種

①自動車(2025年まで)

皮肉なことに、2026年にようやく動き出すと見込まれている自動車業界こそ、2025年までは設備投資が伸び悩んでいた業種の代表格でした。エンジン車でいくのか、ハイブリッド車に軸足を置くのか、EVに全面移行するのか、各メーカーの方向性が定まりきらなかったことが、現場の設備投資判断を鈍らせていたと考えられます。パワートレインの方向性が見えないままでは、何十年も使う前提の工作機械への投資判断は下しにくいものです。

この間、エンジン関連部品をつくっていた金属加工会社のなかには、新規投資を控える一方で、将来的に不要になるかもしれない設備をどうするか、相談を寄せられるケースも見られました。もっとも、2026年からエンジン関連投資がいよいよ動き出すとみられていることを踏まえると、「エンジン部品=いずれ不要になる」と短絡的に判断するのは早計かもしれません。パワートレインの方向性は国や地域、車種によっても異なるため、一律に廃れていくと考えるのではなく、自社の取引先がどの方向に向かっているのかを踏まえて、設備投資・処分の判断をしていくことが重要です。

②中国向け輸出

外需全体は堅調だったものの、中国向けだけは弱含みが続いています。中国国内の不動産不況や、それに伴う地方政府・不動産業界の債務問題、製造業における過剰生産能力の深刻化などを背景に、中国企業の設備投資意欲そのものが弱まっているためです。加えて、中国国内での工作機械の国産化が進んでいることも、日本からの輸出が伸び悩む要因の一つとされています。かつては中国向けの受注が前年同期比で大きく落ち込む局面もみられ、中国市場の失速が外需全体の重荷になっていた時期もありました。

この中国需要の弱さは、新品の工作機械だけでなく、中古工作機械の輸出ビジネスにも実感として表れています。詳しくは次の章でご紹介します。

なお、外需全体としては米国・アジア向けが堅調であったことから、中国一国の弱さが外需全体を押し下げるには至っていません。これは裏を返せば、輸出先を1カ国に依存せず分散させておくことの重要性を示しているともいえます。国や地域によって景気のサイクルは異なるため、複数の輸出先を持っておくことが、需要変動のリスクを分散する有効な手段になります。

【実際の事例】中国向けが減り、東南アジア向けが中心になった輸出の変化

当社の中古工作機械の輸出実務でも、ここ最近、中国向けの引き合いがめっきり少なくなっているというのが実感です。以前は中古機械の輸出先として中国が大きな割合を占めていた時期もありましたが、ここ最近は中国向けの商談自体が減り、代わって東南アジア向けがほとんどを占めるようになってきています。数年前までは当たり前のように中国向けの商談が成立していたことを考えると、この変化のスピードには当社としても驚かされています。

これは、前の章で触れた中国国内の不動産不況や過剰生産能力、工作機械の国産化の進展といった事情と無関係ではなさそうです。中国国内で工作機械そのものを自前で調達できる体制が整いつつあることに加え、景気の先行き不透明感から、そもそも設備投資自体に慎重な企業が増えているのだと考えられます。

一方で、東南アジア(ベトナム、タイ、インドネシアなど)では製造業の拠点としての存在感が年々増しており、工場の新設や生産能力の拡張にともなって、比較的安価に導入できる中古工作機械への需要が底堅く続いています。当社としても、輸出先を中国一辺倒ではなく東南アジア各国に広げてきたことで、中国需要の落ち込みをある程度カバーできている状況です。汎用旋盤やフライス盤のような扱いやすい機械はもちろん、現地での生産拡大にともなって、NC旋盤やマシニングセンタといったある程度の精度が求められる機械への引き合いも増えてきている実感があります。

この経験から言えるのは、中古機械を輸出前提で保有・売却を検討している場合、「中国向けなら高く売れるはず」という過去の相場観をそのまま当てはめるのは危険だということです。輸出先の相場や需要は数年単位で大きく変わります。売却を検討するタイミングでは、最新の輸出先ごとの需要動向を把握している業者に相談することをおすすめします。

また、輸出先が変われば、求められる機械のタイプも変わってきます。中国向けでは比較的新しい年式のNC機や高機能な複合加工機への引き合いが多かったのに対し、東南アジア向けでは、操作がシンプルで整備もしやすい汎用機や、扱いやすい中堅クラスのNC旋盤・フライス盤の人気が根強い、という傾向の違いも感じています。輸出先の変化は、売れる機械の種類にも影響してくるということは、機械を手放すタイミングを考えるうえでも覚えておきたいポイントです。

統計はどこで見られるのか

JMTBAの統計は、日本工作機械工業会の公式サイトで公表されています。「工作機械受注状況」や「需要業種別受注高」といった資料名で毎月更新されており、速報として当月の受注額や前年同月比がまとめられるほか、月を追うごとに業種別の内訳も確認できるようになっています。専門的な統計資料ではありますが、グラフや表でまとめられている部分も多く、業種ごとの大まかな増減を把握するだけであれば、それほど難しくありません。

毎月チェックするのが大変という場合は、四半期ごと、あるいは年に一度の確定値だけでも目を通しておくと、自社が属する業種の設備投資サイクルを把握するのに役立ちます。日本経済新聞をはじめとする経済メディアでも、JMTBAの統計発表にあわせて業種別の動向が報じられることが多いため、そうした記事をチェックするだけでも十分に参考になります。

中古機械の売り時・買い時をどう考えるか

ここまでの内容を踏まえると、業種ごとに中古機械との向き合い方も変わってきそうです。

  • 半導体・航空機関連など成長業種:新規参入や増産のために中古機械を探している企業が多く、程度の良い機械であれば買い手がつきやすい状況。とくに精度を保証できる機械は、相応の価値で評価されやすい
  • 自動車(エンジン関連)など、しばらく投資が停滞していた業種:今後の設備更新にともなって、エンジン関連の古い機械が市場に出てくる可能性がある。一方で2026年から投資が動き出す見込みであることを踏まえると、慌てて処分するより、まずは査定だけでも受けておくという選択肢もある
  • 輸出を前提に機械を保有している場合:中国一辺倒ではなく、東南アジアをはじめとした輸出先の分散を意識しておくことが重要

JMTBAの統計は毎月更新されており、業種別の受注動向を継続的に追いかけることで、自社の機械をいつ、どのように手放す(あるいは買う)のがよいか、判断材料の一つになります。もちろん、統計だけではわからない現場の肌感覚も重要です。迷ったときは、日々の売買で最新の需要動向に触れている買取業者に相談してみることをおすすめします。

とくに注意したいのは、統計上「増えている業種」だからといって、その業種向けの機械であれば何でも高く売れるわけではないという点です。半導体関連の需要が伸びているといっても、求められるのは超精密加工に対応できる高精度な機械であり、同じNC旋盤でも精度や付加機能によって評価は大きく変わります。業種の動向はあくまで大きな流れとして捉え、実際の査定額は機械個体の状態や仕様によって個別に判断されるものだと理解しておくとよいでしょう。

終わりに

今回は、JMTBAの工作機械受注統計から読み取れる、業種ごとの明暗についてまとめました。半導体・AIデータセンター関連や航空・造船関連が好調な一方、自動車業界はパワートレインの方向性が定まらず長らく投資が伸び悩み、2026年からようやく動き出すとみられています。また、外需全体は堅調でも、中国向けだけは不動産不況や国産化の進展によって弱含みが続いており、これは当社が実際に輸出の現場で感じている変化とも一致しています。統計上の数字と、現場で日々接する実感とが重なったとき、それはかなり確度の高いシグナルだといえるでしょう。

新品の工作機械の受注動向は、中古機械市場の先行きを考えるうえでも参考になる情報です。機械の売却や購入のタイミングに迷ったら、業種ごとの需要動向もあわせて、ぜひ当社にご相談ください。

コロナ後の需要変化についてはコロナ後の中古工作機械市場——需要の変化を振り返る、2026年の市場動向全体は中古機械市場の動向2026でも解説しています。

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