工作機械の除却損の計上タイミングと仕訳例【ケース別解説】

執筆者 | 7月 10, 2026 | ブログ

機械 買取

工場の機械設備が老朽化・故障・生産ライン変更などで不要になったとき、会計上は「除却(じょきゃく)」という処理が必要です。しかし実務では、いつ除却損を計上するのか、どのように仕訳を切るのかについて迷う担当者が多くいます。

「機械を廃棄したが帳簿にまだ残っている」「有姿除却の要件がよくわからない」「スクラップ売却と廃棄では仕訳が違うのか」——こうした疑問を持つ経理担当者・工場長の方は多いはずです。

除却損の処理を誤ると、決算書の信頼性が損なわれるだけでなく、税務調査で損金算入を否認されるリスクもあります。逆に正しく処理することで、税負担の軽減につながります。

この記事では、工作機械の除却損について、計上タイミング・計算方法・ケース別の仕訳例・税務上の注意点を体系的に解説します。

そもそも除却とは何か——売却・廃棄との違いを整理する

除却とは、保有する固定資産(機械・設備など)を帳簿から取り除く会計処理の総称です。除却の原因は「廃棄・スクラップ処分」「使用不能(有姿除却)」などさまざまで、それぞれ処理のタイミングや証拠書類が異なります。

まず「売却」「廃棄(除却)」「スクラップ処分」の違いを整理しておきましょう。

処分方法内容発生する損益勘定科目
売却中古機械業者・他社への譲渡売却損または売却益固定資産売却損・益
廃棄(除却)廃棄業者に引き渡して処分除却損(+撤去費用)固定資産除却損
スクラップ処分鉄くずとしてスクラップ業者へ除却損(スクラップ代を控除)固定資産除却損
有姿除却物理的には存在するが使用不能除却損固定資産除却損

「廃棄」と「スクラップ処分」はどちらも除却として処理しますが、スクラップ売却代金が発生する場合はその金額を除却損から控除します。有姿除却は機械がまだ工場内に存在するにもかかわらず会計上は除却扱いにするものです。

これらを混同すると仕訳を誤る原因になります。自社の処分方法がどのケースに当たるかを最初に確認することが大切です。

除却損の計算方法

除却損の基本的な計算式は以下のとおりです。

除却損 = 除却時点の帳簿価額 − 処分によって得た金額 + 撤去・運搬費用

帳簿価額(未償却残高)とは、固定資産の取得原価から減価償却累計額を差し引いた残額です。固定資産台帳を確認すれば把握できます。

帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額

処分によって得た金額は、スクラップ業者への売却代金など、除却に伴って受け取った金額です。廃棄のみで何も受け取らない場合はゼロです。

撤去・運搬費用は、機械を工場内から搬出するためにかかった費用です。廃棄業者への支払いや、クレーン・フォークリフトの費用なども含まれます。この費用は除却損に含めて計上することが一般的です。

例:取得原価300万円、減価償却累計額220万円、スクラップ代10万円、撤去費5万円の場合
帳簿価額 = 300万円 − 220万円 = 80万円
除却損 = 80万円 − 10万円 + 5万円 = 75万円

除却損を計上するタイミング——3つのケース

除却損をいつ計上するかは、処分の状況によって異なります。誤ったタイミングで計上すると税務上の問題になるため、正確に把握しておきましょう。

ケース①:機械を物理的に廃棄・引き渡したとき

最も基本的なケースです。廃棄業者・スクラップ業者に機械を引き渡した日が除却損の計上日です。会計上は「廃棄した事実が確定した日」に損失を認識します。

このケースで特に重要なのは、廃棄の事実を証明する書類を必ず取得・保存することです。税務調査では「いつ、どこに廃棄したか」を証明することが求められます。

必要な書類は以下のとおりです。
・廃棄業者・スクラップ業者からの廃棄証明書または引き渡し確認書
・スクラップ売却の場合は売上伝票・入金記録・銀行通帳のコピー
・産業廃棄物の場合はマニフェスト(産廃管理票)のE票(最終確認票)
・大型機械の場合は搬出時の写真記録

これらの書類がない場合、「帳簿上では除却しているが本当に廃棄したのか不明」として、税務調査で損金算入を否認されることがあります。特にスクラップ業者は小規模な業者も多く、証明書の発行を依頼すると拒否されるケースもあります。事前に書類の発行をお願いしておくことが肝心です。

ケース②:売却・無償譲渡・引取の場合

廃棄ではなく、中古機械業者・他社への売却や無償譲渡によって機械を手放す場合も、所有権を移転した時点で除却損(または売却損)を計上します。「有償・無償にかかわらず所有権を移した日が計上日」という点が重要です。

売却代金が帳簿価額を下回る場合は売却損(除却損に準じて処理)、上回る場合は売却益が発生します。引き渡し日の確認できる書類(売買契約書・譲渡証書・引き渡し確認書)を保存してください。

ケース③:有姿除却(機械が工場内に残っているが使用不能)

故障・老朽化・陳腐化によって機械が使用不能になったものの、まだ工場内に物理的に存在している状態でも、一定の要件を満たせば除却損を計上できます。これを有姿除却(ゆうしじょきゃく)といいます(法人税基本通達7-7-2)。

有姿除却が認められる主な要件は以下の2つです。
① 著しく陳腐化している:技術の進歩により機械の性能が時代遅れになり、事業への有用性がほぼ失われている状態
② 修繕費用が著しく高額:故障・損傷の修繕にかかる費用が、その機械の経済的価値(時価)を大幅に上回る状態

有姿除却の場合は物理的な廃棄の証拠がないため、使用不能の判断根拠を明確に示す書類の整備が特に重要です。税務調査では「なぜ有姿除却できると判断したのか」を詳しく問われます。

具体的に用意すべき書類の例は以下のとおりです。
・修繕業者から取得した見積書(修繕費用が機械価値を大幅に上回ることを示すもの)
・メーカーの部品供給終了・サポート終了の通知書
・使用不能の状態・理由・判断日を記載した社内決裁書または稟議書
・機械の現状を記録した写真

「使っていないから」「古くなったから」という抽象的な理由では有姿除却は認められません。客観的かつ具体的な数値・事実に基づく判断根拠が必要です。

ケース④:「事前に除却を決定しても」実際の完了時に計上

「今期中に除却することを役員会で決定した」「来月スクラップ業者に引き渡す予定だ」という段階では、除却損を計上することはできません。除却損の計上は、実際に廃棄・引き渡しが完了した事業年度に行うのが原則です。

例えば3月決算の会社が「3月に除却を決定し、実際の廃棄は4月」という場合、除却損は翌期(4月以降)の計上になります。「決算を良く見せるために当期に前倒し計上する」ことは認められず、税務調査で否認されるリスクがあります。

ケース別の仕訳例

仕訳例①:廃棄のみ(スクラップ代なし)

【前提】
・機械(旋盤)の取得原価:5,000,000円
・減価償却累計額:3,200,000円 → 帳簿価額:1,800,000円
・廃棄業者への撤去・処分費:80,000円
・スクラップ売却代:0円

借方金額貸方金額
減価償却累計額3,200,000円機械装置5,000,000円
固定資産除却損1,800,000円

撤去費用の仕訳(廃棄業者への支払い時):

借方金額貸方金額
固定資産除却損80,000円現金・預金80,000円

撤去費用は「固定資産除却損」に含めて計上するほか、「修繕費」「雑費」として処理する場合もあります。金額が大きい場合は固定資産除却損に含めるのが適切です。

仕訳例②:スクラップ売却(売却代金あり)

【前提】
・機械(フライス盤)の取得原価:8,000,000円
・減価償却累計額:6,500,000円 → 帳簿価額:1,500,000円
・スクラップ業者への売却代金:200,000円(税込)

借方金額貸方金額
減価償却累計額6,500,000円機械装置8,000,000円
現金・預金200,000円
固定資産除却損1,300,000円

スクラップ売却代は除却損から控除して計上します。もしスクラップ代が帳簿価額を上回る場合は、差額を「固定資産売却益」または「雑収入」として計上します。なお、スクラップ売却代には消費税が課税されるため、インボイス制度に対応した処理が必要です。

インボイス制度(2023年10月以降)では、スクラップ業者が適格請求書発行事業者であるかどうかを確認することが重要です。適格請求書が発行されない場合、仕入税額控除が制限されます。スクラップ業者と取引する際は、事前に登録番号を確認しておきましょう。

仕訳例③:有姿除却

【前提】
・機械(マシニングセンタ)の取得原価:12,000,000円
・減価償却累計額:9,000,000円 → 帳簿価額:3,000,000円
・修繕費見積もり:5,500,000円(機械の時価500,000円を大幅に超える)
・処分価額:0円(物理的にはまだ工場内に存在)

借方金額貸方金額
減価償却累計額9,000,000円機械装置12,000,000円
固定資産除却損3,000,000円

有姿除却後も機械が工場内に残る場合は、固定資産台帳に備忘価額(1円)で残す管理方法もあります。後日実際に廃棄した際は追加の仕訳は基本的に不要です(備忘価額がある場合は1円を除却損計上)。

有姿除却した機械は、除却後も工場内でスペースを占有します。固定資産台帳からは除却処理済みですが、物理的な撤去は別途計画が必要です。予算の都合で撤去を先送りする場合でも、会計処理(除却損計上)は要件を満たした時点で速やかに行うことが重要です。

仕訳例④:減価償却が完了した機械を廃棄

【前提】
・機械(ボール盤)の取得原価:2,000,000円
・減価償却累計額:1,990,000円(備忘価額10,000円残)
・廃棄処分、処分価額:0円

借方金額貸方金額
減価償却累計額1,990,000円機械装置2,000,000円
固定資産除却損10,000円

減価償却が完了した機械は帳簿価額がわずかですが、廃棄したときに必ず帳簿から除却する処理が必要です。「償却済みだからそのまま放置」はNGです。固定資産台帳に記載が残り続けると資産管理が煩雑になり、税務調査でも指摘されます。

注意すべきケース——よくある誤りと対処法

① 除却処理を忘れて帳簿に残ったまま

「機械を廃棄したが経理に連絡していなかった」というケースは非常によくあります。この状態が続くと、翌期以降も誤って減価償却費を計上し続けてしまいます。また、固定資産税の申告書にも残り続け、不要な税金を支払い続けることになります。現場と経理の連携ルールを整備し、機械の廃棄・搬出時には必ず経理へ報告する仕組みをつくることが重要です。

② 証拠書類なしに除却損を計上する

廃棄業者から証明書をもらわずに除却損を計上するケースも多くあります。税務調査では「証拠なき除却」は損金算入を否認される可能性があります。廃棄業者・スクラップ業者に対して、引き渡し前に必ず証明書の発行を依頼してください。

③ 期末前に「決定したから」と前倒し計上する

「3月に除却を決定し、実際の廃棄は4月」という場合、除却損は翌期(4月以降)の計上です。決算を良く見せるために当期に前倒しで計上することは認められません。除却損は実際に廃棄・引き渡しが完了した事業年度に計上するのが原則です。期をまたぐ廃棄は特に注意してください。

④ 減価償却が完了した機械を放置する

「もう減価償却が終わっているから帳簿価額はほぼゼロ。どうせ除却損も出ないから処理しなくていい」と放置するのはNGです。固定資産台帳への記録・固定資産税申告書への記載が残り続けます。備忘価額(1円)の除却損でも仕訳を計上し、台帳と申告書を必ず更新してください。

除却処理の実務フロー——手順を押さえてミスをなくす

除却の会計処理は、以下のステップで進めると漏れなく対応できます。現場と経理が連携して動くことが重要です。

STEP 1:除却する機械の特定と固定資産台帳の確認

まず固定資産台帳で対象機械の情報を確認します。確認すべき項目は以下のとおりです。
・取得原価
・取得年月日
・耐用年数
・減価償却累計額と現時点の帳簿価額
・過去に設備改良(資本的支出)が行われていないか

資本的支出(修繕ではなく機能向上のための投資)が行われている場合は、その金額も加算して帳簿価額を計算する必要があります。固定資産台帳を正確に管理していない企業では、この段階でつまずくケースが多くあります。

STEP 2:処分方法と処分先の決定

廃棄業者・スクラップ業者・中古機械買取業者のいずれに依頼するかを決めます。この段階で複数社から見積もりを取ることで、処分コストを抑えたり、予想以上の売却益を得られたりすることがあります。特に動作する機械は中古買取を先に検討することをおすすめします。

STEP 3:搬出・廃棄の実施と証拠書類の取得

機械の搬出・引き渡しを実施します。このとき必ず廃棄証明書・引き渡し伝票・マニフェストなどの証拠書類を取得してください。後から「書類をもらい忘れた」とならないよう、引き渡し前に確認しておきましょう。

STEP 4:会計仕訳の計上と固定資産台帳の更新

引き渡し日を基準に除却損の仕訳を計上します。同時に固定資産台帳から対象機械を削除(または除却済みとしてステータスを変更)します。台帳の更新を忘れると、翌期以降も減価償却費を誤計上したり、固定資産税が課税され続けたりするリスクがあります。

STEP 5:証拠書類のファイリングと保存

廃棄証明書・マニフェスト・スクラップ売却伝票などの証拠書類を、仕訳と対応付けてファイリングします。法人税法上、帳簿書類の保存期間は7年間(欠損金がある事業年度は10年間)です。電子保存も可能なので、スキャンしてPDF保存する方法も有効です。

除却損と法人税申告書——別表16の記載

法人税の申告では、固定資産の除却に関して別表16(各事業年度の所得の金額の計算に関する明細書)への記載が必要です。

具体的には、除却した機械の取得価額・期首帳簿価額・当期の減価償却費・除却損の金額を別表16に記入します。税務申告を税理士に依頼している場合は、固定資産台帳と証拠書類を提示することで対応してもらえますが、自社で申告している場合は記載漏れに注意が必要です。

また、固定資産税の申告(償却資産申告書)においても、除却した機械を翌年1月末までに申告書から削除する必要があります。1月1日時点で台帳・申告書に機械が残っていると、翌年分の固定資産税が課税されてしまいます。年度末の決算処理と合わせて、固定資産税の申告内容も見直すことをおすすめします。

税務上の重要ポイント4つ

① 損金算入のための証拠書類を必ず保存する

繰り返しになりますが、除却損を税務上の損金として認めてもらうには証拠書類が不可欠です。廃棄証明書・マニフェスト・スクラップ売却の記録など、廃棄の事実が第三者にも確認できる書類を7年間(欠損金がある場合は10年間)保存してください。

② 固定資産台帳から必ず削除する

除却の会計処理をしたら、固定資産台帳からも機械を削除してください。帳簿では除却したのに台帳に残ったままだと、翌期以降も誤って減価償却費を計上してしまう恐れがあります。また固定資産税は1月1日時点の固定資産台帳をもとに課税されるため、台帳に残ると固定資産税も払い続けることになります。

③ 消費税の取り扱い

スクラップとして売却した代金は消費税の課税売上になります。インボイス制度(適格請求書等保存方式)の下では、スクラップ業者に適格請求書(インボイス)の発行を求める必要があります。また廃棄業者への撤去費用の支払いは課税仕入れとなり、仕入税額控除の対象です。消費税の処理を誤らないよう注意しましょう。

④ 固定資産の除却と少額減価償却資産の関係

取得価額が30万円未満の機械は、中小企業の少額減価償却資産の特例(青色申告法人)で取得時に全額損金算入できます。この場合、取得時にすでに全額が費用化されているため、廃棄時に別途除却損を計上する必要はありません。ただし固定資産台帳の管理・削除は必要です。

除却処分の前に買取査定を——損失を最小限にする方法

工作機械を除却処分する前に、ぜひ一度中古機械の買取相場を確認することをおすすめします。スクラップに出すと数万円にしかならない機械が、中古機械買取業者に売ることで数十万〜数百万円の評価になるケースは少なくありません。

特に「まだ動く」「部品が揃っている」「購入から10年以内」という機械は、中古市場で高く評価される傾向があります。帳簿上の価値(帳簿価額)と市場での価値(時価)は必ずしも一致しません。帳簿価額がゼロでも、市場ではまだ高値がつく機械があります。処分前に必ず複数の業者に査定依頼することをおすすめします。

除却と売却では会計処理も変わります。帳簿価額より高く売却できれば、除却損ではなく固定資産売却益として利益に計上でき、税負担の観点でも有利になります。

中古市場での需要が高い機械の特徴は以下のとおりです。
・国産大手メーカー(ファナック・オークマ・マザック・DMG森精機・ヤマザキなど)の機械
・NC・CNC装置付きの旋盤・マシニングセンタ・フライス盤・研削盤
・製造終了モデルや希少な汎用機
・導入後15年以内で状態が良い機械
・予備部品・工具類が揃っている機械

一方、故障している機械・老朽化が著しい機械・部品供給が終了しているモデルでも、ジャンク品・部品取り目的で一定の需要があります。「どうせ売れない」と決めつけず、まず査定を受けてみることが大切です。

機械買取センターでは、動作不能・老朽化した機械でも買取可能なケースがあります。除却処分を検討している工作機械がある方は、お気軽にご相談ください。

まとめ

工作機械の除却損について、計上タイミング・計算方法・仕訳例・税務ポイントを解説しました。重要なポイントをまとめます。

除却処理は一度きりの処理ですが、その後の管理も重要です。除却した機械の情報(除却日・処分方法・除却損の金額・証拠書類の保存場所)を記録に残しておくことで、税務調査の際にスムーズに対応できます。また、同種の機械を再度購入した場合に過去の処分コストを把握しやすくなり、設備計画にも役立ちます。

計上タイミング
・廃棄・スクラップ処分した日(引き渡し日)
・有姿除却:使用不能の客観的理由+書類整備が必要
・期中の意思決定での計上は慎重に(税理士に相談推奨)

計算方法
除却損 = 帳簿価額 − 処分価額 + 撤去費用

必ずやること
・廃棄証明書・マニフェストなど証拠書類の取得と保存(7〜10年)
・固定資産台帳からの削除
・消費税処理(スクラップ代は課税売上、撤去費は課税仕入れ)

除却処分の前に中古買取の査定を受けることで、損失を大幅に減らせるケースがあります。不要になった工作機械の査定・買取についてお困りの方は、機械買取センターにお気軽にご相談ください。全国対応・出張査定無料で承っております。